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テレワークの効果・効用

政府のテレワークへの取り組み

下図は、企業にとってのテレワーク導入の効果をまとめたものです。テレワークの効果は、図のように5つのカテゴリーに分けられます。以下では、それぞれについて、どのような効果があるのかを具体的に解説します。

企業にとってのテレワークの効果

企業にとってのテレワークの効果イメージ

(1) 業務生産性の向上

生産性向上効果がもっとも分かりやすく表れるのは、モバイル勤務です。 たとえば営業職の社員が、顧客先で在庫状況や技術的質問を受けた場合を想定してください。その場でタブレットから会社のサーバーにアクセスし、即座に回答できるのと、会社に帰ってから顧客に連絡するのとではスピード感が全く異なります。
また、本人が回答できない質問をついても、その場でWeb会議システムを使い、社内の専門家を呼び出して対応することも可能です。システムエンジニアやデザイナーなどの専門職が営業担当者と同行しなくて済むことにより、コストと労働時間を大幅に削減できます。

また顧客先での商談後、次の顧客先でのアポイントまで2時間あったとします。その間、本拠地に戻って短時間事務作業をするのと、次の顧客先近くのサテライトオフィスやカフェで仕事をするのとでは、時間あたりの生産性が大幅に変わります。これにより、顧客面談時間や顧客訪問件数が増加するなどの効果が期待できます。

一方、在宅勤務の生産性向上は、なかなか理解されづらいところがあります。一般的には、スタッフ職であれば、在宅勤務時に集中して業務ができ、生産性が上がるとされています。電話や来客への対応、同僚などからの話しかけなどがないため、デスクワークを中断されないからです。多くの企業でテレワーク実施後アンケートをとると、大体の傾向として9割の回答者は、「生産性が向上したか、変わらない」と回答しています。ただ1割の回答者からは、「コミュニケーションがとりづらく、生産性が下がった」という回答がみられます。

テレワークは社員の意識改革にもプラスの効果があります。「いつでも・どこでも・誰とでも働ける」という働き方の変革によって、社員のフットワークが軽くなり、他部門や他社との連携が進むからです。顧客や現場部門からの的確な情報を入手しやすくなる、などの効果も期待できます。さらにテレワークする場合は、実施する業務を自ら計画し、実行しなければなりません。これにより、多くの企業で「社員の自律性が高まった」というアンケート結果が得られています。

(2) 新規雇用・離職防止

テレワークで働きやすい環境を整備することにより、 優秀な人材の採用もしやすくなります。在宅勤務制度などワーク・ライフ・バランスに配慮した企業の人気は高くなりつつあります。

たとえば横浜にある社員数39名の電機工事会社では、テレワーク導入以前に新卒を募集しても、応募はせいぜい数人程度でした。ところが、募集要項に「在宅勤務・モバイル勤務可能」と記載したことにより、現在では毎年300人以上の応募があるようになりました。

そしてテレワークは障がい者の雇用にも効果があります。平成30年4月から障がい者の法定雇用率は2.2%に上がりました。しかし首都圏で新たに障がい者を雇用しようと思っても、働ける障がい者はすでに働いていて、新規採用しづらい状況です。そこで、地方の障がい者を在宅勤務で雇用する企業が徐々に増えつつあるのです。これは、情報通信機器の活用で障がい者が同僚とコミュニケーションをとりながら終日在宅勤務することが可能になったことでの効果と言えるでしょう。

テレワークは社員の離職防止にも効果があります。内閣府の調査では、30〜34歳の女性の就業率は、1980年の48.2%から、2000年に57.1%、2020年には77.8%と年々高まっており、第一子を出産する年齢にさしかかる女性が社内でベテランとして働いていることがわかります。会社にとって、せっかく教育し仕事に慣れてきたこの年齢層の女性社員が離職するのは大きなマイナスです。就業者本人にとってもキャリアを積み、これから活躍の場が広がる時期に離職するのはとてももったいないことです。在宅勤務制度があれば、産休明けに在宅勤務などを有効に活用することにより、就業を継続しやすくなります。

日本では介護・看護による離職者が年間約10万人に及び、その約8割を女性が占めています。2025年には、いわゆる団塊の世代の約800万人が後期高齢者になると、介護や看護の必要から仕事を辞めなければならない人のいっそうの増加が懸念されます。テレワークを活用すれば、介護と仕事の両立が実現しやすくなります。テレワークの普及により介護離職を防止することは、喫緊の課題です。

最近は、家族の転勤があっても、離職せずに在宅勤務で就業継続する事例も出てきています。一部の会社では優秀な社員が離職するのを防止する手段として、テレワークを積極的に活用しているのです。今後、このようなテレワークの活用が一般的になることが期待されます。

(3) 社員のワーク・ライフ・バランスの実現

テレワークはワーク・ライフ・バランスの実現に有効です。テレワークを利用することによって、通勤に必要だった時間を自己啓発や健康管理のための睡眠、家族と共に過ごす時間に利用することができます。また、在宅勤務の場合は、保育園への送迎と業務を両立しやすくなる、介護や家事の時間を確保しやすくなるという効果があります。

またワーク・ライフ・バランスを確保しやすい組織は、「企業ブランド・イメージの向上」、加えて従業員の仕事に対する「満足度と意欲の向上」につながります。

テレワークは怪我や病気の時にも効果があります。例えば、足を骨折した時など、ある程度回復した時点では、通勤は困難であっても仕事は可能になります。家や病院の休憩室などでテレワークすることによって、仕事のブランクを埋めることができます。

下図は、テレワークを実施している企業の従業員に向けたアンケートから、「テレワークで自由時間が増えた人」に、その自由時間の活用希望場所と活動希望内容についての回答をまとめたものです。自由時間の活動希望場所を自宅内でと答えた人が83.7%、自宅周辺でと答えた人が45.8%となっています。さらに活動希望内容は、自宅では趣味が63.6%、家での家族との時間が36.6%と上位を占め、ワーク・ライフ・バランス実現への期待感がうかがえます。

テレワークで生まれた自由時間の活用方法・場所

テレワークで生まれた自由時間の活用方法・場所

自由時間の活動希望場所と活動希望内容

テレワークで生まれた自由時間の活用方法・場所

※複数回答あり
出典:国土交通省「令和3年度 テレワーク人口実態調査
(2-24.テレワークで生まれた自由時間の活用方法・場所)」

(4) コスト削減

テレワークはコスト削減にも有効です。テレワークの導入と併せ、オフィスの勤務者が固定席を持たずに、毎日任意の席に座る「フリーアドレス」を導入すれば、勤務者全員の席を用意する必要がなくなり、賃料や電力をはじめとするオフィス関連コストを削減できます。とくに在席率の低いオフィスでは、この手法によりコスト削減効果は絶大です。

また、顧客先や現場に直行・直帰すれば、移動時間の削減につながり、交通費や残業代も削減できます。テレワークを導入した多くの企業で残業代は10%以上減少しています。

(5) 事業継続性の確保

テレワークは事業継続性の確保(BCP:Business Continuity Plan)にも有効です。自然災害や新型インフルエンザ、さらに昨今の新型コロナウイルス感染症などのパンデミック発生時でも、普段から在宅勤務をしていれば、事業継続が可能となります。東日本大震災後の首都圏の交通機関の混乱時でも、IT企業や外資系の企業といったテレワーク導入企業の多くが在宅勤務をすることにより、支障なく業務継続できました。

また、大雪や台風などの発生時は在宅勤務に切り替えられることで、不確実な長時間通勤を避けることも可能です。本人だけでなく、家族に感染症が発症したことでしばらく出社できない場合があります。このような時も在宅勤務制度があれば、在宅勤務を開始できます。

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