厚労省ロゴ

総務省ロゴ

文字サイズ

長野県塩尻市・松本市

【取材日:平成30年1月16日】

ワーケーション

3拠点の連携で中信地域のテレワーク拡充を実現

コワーキングスペースのColaboが入居するビルはガラス張りでモダンなデザイン。
▲塩尻情報プラザの2階にあるコワーキングスペースのColabo。テレワークセンターの機能も兼ねている

かねてよりICTを活用し都市部から県内市町村への人と仕事の流れを生みだす取組み「信州ふるさとテレワーク推進協議会」の立上げを目指していた塩尻市は、平成27年度に総務省が実施した「ふるさとテレワーク推進のための地域実証事業」に長野県及び富士見町、王滝村とともに参加しました。実証事業で成果を挙げた塩尻市は、平成28年度に同省が実施した「ふるさとテレワーク推進事業」に、今度は松本市と共同で参加。「長野県中信地域ふるさとテレワーク推進コンソーシアム」を組織し、中信地域のテレワーク拡充に貢献してきました。そこに至る経緯と今後の展望について、コンソーシアム代表機関として両事業に参加した一般財団法人長野経済研究所の中村雅展氏にお話を伺いました。

目次

1.近隣自治体と共同でテレワーク推進事業を展開

2.都市部企業とともに3拠点をオンラインでつなぐネットワークシステムを構築

3.個人事業主を対象にしている理由は、ワーカーの自立を見据えているから

4.安定的な仕事の供給の実現と継続性のある運営を目指して

5.本事例についてのお問合せ先

1. 近隣自治体と共同でテレワーク推進事業を展開

塩尻市内にある大型商業施設の外観。
▲大型商業施設の建物の3階スペースに入る「テレワークセンターしおじり」

塩尻市が「ふるさとテレワーク推進のための地域実証事業」に参加することになった経緯についてお聞かせください。

きっかけは「KADO(かどう)」という愛称で、在宅就業支援事業を実施した平成21年度に遡ります。KADOは自立支援や人材育成を目的に組織され、塩尻市が100%出資する一般社団法人塩尻市振興公社が運営してきました。
その後、KADOは働ける場所と時間に制約がある方々へ向けた新しい就業の提案・支援へと事業内容をシフトし、業務の受注やテレワークセンターのマネジメントなども行うようになりました。
塩尻市にはそうしたテレワーク推進の下地があったので、実証事業にも参加しやすかったという背景があります。また、業務の受注や調整も、塩尻市振興公社がスムーズに行えたのです。

「ふるさとテレワーク推進事業」を塩尻市と松本市が共同で展開していくことに決めた理由と経緯についてお聞かせください。

塩尻市は長野県の協力のもと、富士見町、王滝村と平成27年度の実証事業に参加しましたが、松本市においても、松本商工会議所が、同事業に横須賀商工会議所と共同で参加していました。お互いに、他の地域と共同でテレワーク推進事業を行うことに慣れていたのです。
塩尻市は平成27年度の実証事業において、ネットワンシステムズ株式会社などがサテライトオフィスに入居するなど、成果を挙げていました。他にも地元企業からウェブサイトの構築や事務処理、データ入力などを依頼されることも多くなり、塩尻市内のテレワーカーのみでは対応が困難なほど仕事の受注量が増えてきていました。
そこで人口が塩尻市の約4倍の松本市と共同でテレワーク推進事業を行えたら、効率的にワークシェアができ、相乗効果が生まれるのではないかとの仮説が生みだされるに至ったというわけです。そしてふるさとテレワーク推進事業への共同参加を機に「長野県中信地域ふるさとテレワーク推進コンソーシアム」を組織し、連携をとりながらテレワークの推進を目指すことになりました。

2. 都市部企業とともに3拠点をオンラインでつなぐネットワークシステムを構築

複数人掛けのデスクはもちろん、プロジェクターも完備している。
▲ワーカーはもちろん、フリーランサーなど、誰でも利用できるColabo

小規模であるが、モニターも完備されており、機能としては申し分ない。
▲テレワークセンターしおじりやKnower(s)と遠隔会議が可能なColaboのTV会議室

塩尻市と松本市では、実際にどのように連携をとって長野県中信地域ふるさとテレワーク推進コンソーシアムを展開しているのですか?

まず塩尻市のテレワーク推進事業の施設についてご説明しますと、大きく分けて2つの柱があります。1つは「テレワークセンターしおじり」にあるサテライトオフィスとテレワークセンターで、もう1つはコワーキングスペースの「Colabo(コラボ)」です。一方の松本市はクリエイターが共有する民間のワークスペースの「Knower(s)(ノウアーズ)」が当事業のコワーキングスペースとなっており、これらの3拠点はネットワークで結ばれています。都市部企業から派遣されたテレワーカーと本部のある都市部拠点が円滑にコミュニケーションをとれるよう、TV会議システムを3拠点それぞれに整備し、拠点間において、必要に応じ指示や報告、相談といった意思伝達をすることが可能です。

企業ごとにパーテーションで仕切られ、セキュリティ面も安心
▲企業ごとにパーテーションで仕切られたテレワークセンターしおじりのサテライトオフィス

仕事の割り振りについては、サテライトオフィスとテレワークセンターで完全に分けています。サテライトオフィスでの業務は、それぞれの企業からテレワーカーとして派遣された社員や、地元採用をした専門のワーカーが担当することになっており、パーテーションで仕切られた個別のサテライトオフィスには、関係者以外は許可なく立ち入ることはできません。
テレワークセンターについては、テレワークセンターしおじりのスタッフがワーカーのスキルと適性を見極めて振り分けています。仕事を割り振られたワーカーは、業務内容や各自が置かれている環境に合わせて、テレワークセンターしおじりや自宅などで作業をします。その一部業務がテレワークセンターしおじりからKnower(s)へ委託され、Knower(s)ではその業務を「責任者」が取りまとめてワーカーに振り分けています。もともとKnower(s)はクリエイターが共有するワークスペースということもあり、専門的な知識や経験を有する人が多く利用しています。Knower(s)としてもフリーランスや移住者が仕事をしやすい環境を構築したいとの考えがあったので、良い成果を得られているようです。

3. 個人事業主を対象にしている理由は、ワーカーの自立を見据えているから

コワーキングスペースのKnower(s)はおしゃれなカフェのような外観。
▲松本市のコワーキングスペースのKnower(s)。JR松本駅から徒歩7分の好立地にある

プレゼンも可能なプロジェクターを備える。
▲Knower(s)のコワーキングスペースにはプレゼンも可能なプロジェクターを備える

入退出管理システムを備え、デザインと実用性を兼ねている。
▲入退出管理システムを備えたKnower(s)のエントランス

長野県中信地域ふるさとテレワーク推進コンソーシアムが対象にしている利用者像についてお聞かせください。

個人事業主やこれから起業を考えている人です。
仕事に対する報酬は案件によりけりなので、時間換算であったり、単価が決まっていたりさまざまです。しかも正直なところ報酬が高いとはいえないので、我々には、ワーカーにここで自信とスキルを身に付けて次のキャリアに進んでほしいという考えもあります。そうした状況を照らし合わせ、個人事業主に利用してもらう方が、お互いにメリットがあると。
実際に民間のクラウドソーシングに進んだ元ワーカーもいますし、クライアントに社員として採用された人もいます。ワーカーの「リーダー」になって、テレワークセンターしおじりのスタッフになるという道もあります。
実はテレワークしおじりのスタッフは、全員元ワーカーなんです。彼、彼女たちは現場を把握し、仕組みもよく理解しています。ワーカーとのコミュニケーションもしっかりとってくれるので、この事業を進める上で欠かせない人材です。

4. 安定的な仕事の供給の実現と継続性のある運営を目指して

インタビューにお答えいただいた一般財団法人長野経済研究所の中村雅展氏
▲一般財団法人長野経済研究所の中村雅展氏

これまで順調に歩みを進めてきた長野県中信地域ふるさとテレワーク推進コンソーシアムですが、今後はどのようなことが課題になると思いますか?

一番は安定的に運営できるのかということです。おかげさまで順調に仕事量が増えているので、今後はどのようにうまく仕事を回していくのかが鍵になります。
需要が増えている現状を考えると、単価を上げる段階にきているのかもしれません。しかし受注量をセーブしたら、開店休業状態に陥ってしまうことも考えられます。受注する塩尻市振興公社としては、世の中の流れや状況をしっかり見極めることが大事になってくると思います。
また、スキルのある人材をどう活用していくのかということも課題です。これまではスキルは後から身に付ければいい、という考えのもとで進めてきましたが、製造業が盛んな塩尻市には出産や育児で大手精密機器メーカーを退職した有能な方が多くいます。これからは複雑な仕事が増えてくることも考えられるので、そうしたスキルがある方々に活躍していただく必要も出てくると思います。そして、そのスキルに見合った報酬をきちんと支払うことも考える必要があります。

最後に、今後の展望と長野県中信地域ふるさとテレワーク推進コンソーシアムに興味を持っている方へのメッセージをお願いします。

平成30年5月には塩尻市の2拠点近隣に松本広域圏イノベーションプラザ(仮称)が開設されることもあり、オープンイノベーションを通じた新しい事業の創出や人材の交流が期待されています。松本市の中心市街地にも、平成31年度中を目処に新たな拠点を開設する動きがあります。
塩尻市と松本市のテレワーク推進事業は、それぞれの拠点が特色を生かして運営をしています。利用を考えている個人や企業の方々にとっても、働く拠点を選べるというメリットがあります。
この地域には特色のある産業が存在し、他分野との融合による新しい製品やサービスの創出も可能です。ぜひ、塩尻市・松本市にお越しください。

お問合せ先

コワーキングスペース
「Colabo (コラボ)」

電話 0263-87-3102

Social Hub Space
「Knower(s) (ノウアーズ)」

http://knowers.jp/
電話 0263-36-8890

(参考)平成28年度予算補助事業の取組内容はこちら
(参考)平成26年度補正予算地域実証事業の取組内容はこちら
ふるテレ事例一覧へ戻るふるテレ事例一覧へ戻る

お問い合わせアイコン
お問い合わせ

テレワーク相談センター

0120-861009

9:00〜17:00(土・日・祝日を除く)