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福島県会津若松市

【取材日:平成30年8月8日】

企業誘致

特色あるサテライトオフィス

「スマートシティ会津」で活用が進むテレワーク

もとは病院であった、古き良き趣を残す建物。
▲会津若松市サテライトオフィス外観(旧黒河内医院)

かつて会津藩の城下町として栄え、現在はICT活用による産業創出や人材育成などを軸に「スマートシティ会津若松」を推進する、福島県会津若松市。同プロジェクトの一環として市内に整備された複数のサテライトオフィスでは、市内の拠点設置を検討する企業が一年間、オフィスを無償で利用し、テレワークを含めた柔軟な働き方を試行することができます。
今回訪れたのは、日本電気株式会社 (以下、NEC)、ゼビオコーポレート株式会社 (以下、ゼビオ)、そして會津アクティベートアソシエーション株式会社 (以下、AAA)が入居しているサテライトオフィス(*旧黒河内医院)。
*総務省の「ふるさとテレワーク推進のための地域実証事業」も一つのきっかけとなりサテライトオフィス需要が発掘され、市内に複数のサテライトオフィスが現存。ただし、実証事業(平成27年度に実施)の対象施設は、市内1ヶ所目の「旧市長公舎サテライトオフィス」で、市内2ヶ所目となる「旧黒河内医院」は対象外。

アクセンチュア株式会社 ・福島イノベーションセンター長の中村彰二朗氏、NEC会津イノベーションセンター長の長田健史氏、ゼビオコーポレート副社長執行役員の春名秀樹氏、そしてAAA代表取締役社長の満田善護氏にお集まりいただき、テレワークの役割や将来性、これからの働き方についてお聞きしました。

 

目次

1.地方移住がトレンドの今こそ、テレワークは最適な働き方(アクセンチュア)

2.テレワーク拠点で地方の課題を肌で実感し、ソリューション創造につなげる(NEC)

3.シェアードサービスとCSV(共有価値の創造)の2軸で地域創生(ゼビオ・AAA)

4.官民連携でスマートシティが加速する会津若松市

5.自然豊かな環境の自律型テレワークは仕事の成果を上げる

6.本事例についてのお問合せ先

1. 地方移住がトレンドの今こそ、テレワークは最適な働き方(アクセンチュア)

インタビューに応じていただいた春名秀樹氏(ゼビオ)、満田善護氏(AAA)、中村彰二朗氏(アクセンチュア)、長田健史氏(NEC)
▲左から春名秀樹氏(ゼビオ)、満田善護氏(AAA)、中村彰二朗氏(アクセンチュア)、長田健史氏(NEC)

各社が会津に拠点を置いた経緯やここでの事業内容をお聞かせください。まずアクセンチュアの中村様から伺えますか?

中村氏:アクセンチュアは東日本大震災後の2011年8月に、震災復興の事業拠点(福島イノベーショセンター)を会津若松市に設置し、テクノロジーコンサルティングやデータアナリティクスの分野でテレワーク導入を進めていました。
次に本社機能のさらなる分散を検証すべく、平成27年度に実施した「ふるさとテレワーク」実証事業では経理や人事など管理部門の一部をこちらに移しました。結果としては全く問題なかったですね。

業務の地方分散という流れが社内にあって、会津でもまずはサテライトオフィスを設置しつつ本格的な拠点を作るという大まかなシナリオがありました。その中で本制度を活用したという経緯です。

サテライトオフィスの設置時は、実証事業参加を前提に11名が会津に移住されたそうですね。

中村氏:全員が移住を希望した社員たちです。今年も、数十名が会津勤務を希望して入社しました。

会津希望の新入社員は、やはり会津出身者が多いですか?

中村氏:いえ、そんなこともありません。昨年(2017年)は会津大学の卒業生を数名採用しましたが、東京を勤務地として希望したのは1名のみでした。そして、希望者のうち会津出身は1名だけです。4年間も過ごすと離れがたくなる街なんですね。「*会津の三泣き」が生きているというか。

会津希望の新入社員は、やはり会津出身者が多いですか?

中村氏:いえ、そんなこともありません。昨年(2017年)は会津大学の卒業生を数名採用しましたが、東京を勤務地として希望したのは1名のみでした。そして、希望者のうち会津出身は1名だけです。4年間も過ごすと離れがたくなる街なんですね。「*会津の三泣き」が生きているというか。

*「会津に来たときは会津人のかたくなな気風に泣かされ、会津人になじむと今度は人情深さに泣き、会津を去るときは別れがたく泣く」という、会津人の人情深さを表す言葉。

社会全体でも、特に若い世代の地方移動の流れができてきていますよね。

中村氏:私が会った1人は、「首都圏で片道1時間(往復2時間)の通勤時間があると、月40時間つまり5日間を無駄にすることになるので、10分で通える会津勤務を選んだ」と言っていました。地方の方が生産性が高いと考えたからとのことです。
首都圏に比べれば家賃も低いから、可処分所得も間違いなく増えると思いますよ。

会津でのテレワークには、低い生活コストや身近な自然環境などいろいろなメリットがありますが、反対にデメリットや不満点はいかがでしょう?

中村氏:ロジスティクスの不便さは挙げられると思います。首都圏から会津に来るには高速道路や新幹線を使う際も、郡山を経由する必要があるので。

これからの時代の働き方はどのようにお考えですか?

中村氏:アクセンチュアの場合、地方拠点ごとに特性を持つようにしています。例えば会津はイノベーション実証拠点、札幌はニアショア開発拠点、福岡は……といったように。
同時にテレワーク環境も整備されていますから、例えば「夏は北海道で働き、冬は会津でウィンタースポーツを楽しみながら働く」といったフレキシブルな働き方が実現するはずです。

2.テレワーク拠点で地方の課題を肌で実感し、ソリューション創造につなげる(NEC)

内装はきれいに整備され、パソコンを置いて各人が仕事に取り組むことができる。そんなデスクに赤べこが置かれている。
▲旧黒河内医院内のNECオフィス。手前は会津の伝統玩具「赤べこ」

NECは、どのような経緯で会津に拠点を?

長田氏:NECはこれまで、東京で開発したソリューションやサービスを国内各地や世界で売るのが、ビジネスの基本的なあり方でした。しかし、地方創生に対しては、都市とは全く違う地方の課題を認識し、地域目線で考えることが必要です。

そこで、このような新しい挑戦に向けた拠点を検討したところ、スマートシティの試みが進み、行政もICTに協力的、アクセンチュア様も先行して拠点を持っているということで、2017年4月に会津イノベーションセンターを開設しました。

今は私を含めて東京から2名、仙台から2名移住し、計4名がここで働いています。

すると、今はマーケティングリサーチなどを?

長田氏:そうですね。地域事業者とさまざまな企画や実証の相談をしつつ、地域目線で課題の洗い出しをしています。
今までは東京で物事を考えていたので、ついつい都市インフラを念頭においたソリューションを考えてしまいますが、地方はまた状況が別なので、何を前提にソリューションを作るべきか現地でテレワークしながらリサーチしているところです。現地にいるとやはり課題を肌で実感できます。

古き良き趣が残る階段。
▲ドラマセットのような雰囲気がある階段

働き方の観点で、会津に来て気づいたことはありますか?

長田氏:実感したのはアナログな人間関係の大切さです。
テレワークのツール自体はもう十分揃っていますよね、コミュニケーションにしてもデータ共有にしても。ただ、仕事をスムーズに進めるための根幹の人間関係は、やはり顔を合わせた気軽な雑談やちょっとしたコミュニケーションに負う部分も大きいと感じていて、それはテレワークだと工夫が必要なところです。

たしかに、テレビ会議だと雑談はしづらいですよね。

長田氏:大勢が集まるオフィスでは、誰がどこのデスクやフロアにいるかなど大体わかっていますから、休み時間に会いに行って雑談したり、その場で簡単な打ち合わせを済ませられますけど、テレワークだと少しハードルがあります。
ですから、テレビ会議以外にも月に1、2回は東京や仙台に行って対面コミュニケーションを取るようにオフィス全体で意識しています
私自身も週1回は東京に行きますが、その日はほとんど30分刻みでいろいろな人とミーティングして、対面のコミュニケーションを取るようにしています。

3. シェアードサービスとCSV(共有価値の創造)の2軸で地域創生(ゼビオ・AAA)

旧黒河内医院内のゼビオオフィス。奥のモニターには郡山本社オフィスの様子が常に映し出されている。
▲旧黒河内医院内のゼビオオフィス。奥のモニターには郡山本社オフィスの様子が常に映し出されている。

ゼビオは、会津に隣接する郡山市に本社を構える地元企業ですが、この会津に拠点を置かれた経緯はいかがでしょう?

春名氏:2011年3月の震災以降、会津地域は風評被害もあり多様な支援を必要としている状況でした。そこで、民間主導による復興・地域創生を目指し、拠点を会津に置くことに決めたんです。
実施事業としては、バックオフィス業務の*シェアードサービス化、そしてCSV事業(Creating Shared Value:共有価値の創造)が主です。CSVでは、ゼビオが幹事会社としてAAAを立ち上げました。私も取締役を務めています。

*企業グループが、人事や経理などのバックオフィス機能を担う部署を一箇所に集約すること。バックオフィス業務をグループ外の企業にサービスとして提供するケースもある。

バックオフィス業務を会津に集約し、シェアードサービス化する意図はどんなところでしょう?

春名氏:会津はいわゆる中小企業や零細企業が多いのですが、こういった会社は大企業に比べるとやはりバックオフィス機能が弱い傾向にあります。そこで、ゼビオの持つバックオフィス機能のプラットフォームを使っていただき本業務に集中できる環境を整えようという考えです。
今のところは、郡山本社に集中しているバックオフィス業務のうち、ITと経理を会津に持ってこられないか実現性をリサーチしています。

7つの酒蔵の純米吟醸酒
▲7つの酒蔵の純米吟醸酒

CSVとしては、AAAはどのような事業を?

満田氏:AAAはゼビオを含めた地元企業様が出資し、2017年9月に立ち上がった会社です。会津地域のブランディングを目指しており、現在は日本酒のブランディング事業を行っています。
実は福島県は、全国新酒鑑評会で金賞受賞数が6年連続日本一という酒どころ。しかも半数以上が会津の酒蔵のお酒なんです。ワインにおけるボルドー地方のように、「日本酒といえば会津」と広く知っていただきたく活動しています。

ボトルデザインがかわいらしいですね。

満田氏:モチーフは会津の郷土玩具の赤べこです。今は7つの酒蔵の日本酒を販売していて、デザインは統一しています。酒蔵は来春にはもう6箇所増えて13箇所になる予定です。
会津は米どころでもありますから、稲作農家の活性化にもつなげたいですね。

4. 官民連携でスマートシティが加速する会津若松市

一部にガラスの壁が採用されモダンなデザインとなっている2019年2月末完成予定のICTオフィスビル
▲2019年2月末完成予定のICTオフィスビル・交流棟「スマートシティAiCT(アイクト)」。ICT関連の複数企業から約500名が入居予定

会津に拠点を持つ各企業同士で、連携や情報共有なども行なっていますか?

中村氏:市が運営する「まち・ひと・しごと創生包括連携協議会」という組織があり、またその下部組織として、地元に拠点を持つさまざまな業種から構成される「スマートシティ推進協議会」という場があります。これらの場で積極的に各社が情報共有を行って、バラバラの支援や重複開発を避けるようにしています


▲2階の会議室

このオフィスは歴史のある旧医院の建物を改装したということで趣がありますが、使い勝手はいかがでしょう?

長田氏:広いオフィスだと周りに人が多かったり、時間のアナウンスもあったりしますが、ここは中も外も静かなので集中してついつい時間を忘れて遅くまで働いてしまうことがありますね。良くも悪くも(笑)
電源が少ないのは課題かもしれません。

中村氏:私見ですが今は働き方の過渡期だと思っていて、テレワーク導入を進めれば極端にいえば働く場としてのオフィスはいずれ不要になるのではないでしょうか。
もっとも、先ほど長田さんが言っていたように、対面コミュニケーションや、テレワークを始める契機のためにはオフィスは大切ですが、いかにもオフィス然とする必要性はないでしょうね。

5. 自然豊かな環境の自律型テレワークは仕事の成果を上げる

中村さん、長田さん、春名さん、満田さんが机を囲囲んでいる。

最後に、各社のこれからの展望や、テレワーク導入を検討している企業や個人へのメッセージをお聞かせください。
アクセンチュア様はいかがでしょうか?

中村氏:東京は既にかなり効率化されていますが、地方はやるべきことがまだ多くあります。例えば、消費税の軽減税率や、インバウンド観光のためにクレジットカード対応店舗を増やすとか。自動運転やスマホを使った選挙も、高齢者の多い地方でこそ必須な技術です。デジタル技術は地方でこそ必要なんですね。
このような課題に対して、東京のノウハウを地方に伝えつつ地方の人と共に取り組むのが大切。若者も雇用があればもっと地方で働くようになるでしょう。そのためにもテレワークやサテライトオフィス活用は最適な方法です。

テレワークへのステップとしては、固定席オフィスからいきなりの移行はやや唐突かもしれません。まずはフリーアドレス・オフィスや社員管理システムの見直しから、自律した働き方を定着させることが必要です。自律型就労スタイルが定着した状態ならば、テレワークに移行しても成果は絶対に落ちないと考えています

長田氏:NECとしては、地域視点での新しい事業を作ることが第一のテーマです。会津という、デジタルに理解がありかつ周りの協力が得やすいこの場所で、モデルを作っていきたい。
そのうえで、「会津だからできたことだ」と言われてしまわないように、他の地域でも並行して取り組むことが重要だと認識しています。

春名氏:CSV事業を地域創生モデルと組み合わせ、地域貢献しながら企業としての利益もあげることがこれからの目標です。シェアードサービスもさらに進め、雇用創出や地域インフラ整備に繋げたい。

都会の喧騒は、刺激を受けてセンスを磨くには向くかもしれませんが、独創的な発想は生まれにくいものです。一方、会津のような雄大な自然環境の傍で仕事をすると視点の変化と発想の柔軟性が生まれます

人と人との距離も近くコネクションも作りやすいと思います。今はこうして他社の中村さんや長田さんとも楽しく話しているけど、オフィスが都内だったらこんなにフランクに話す関係になっていなかったかもしれない(笑)。
テレワークによって都会と田舎の2つの拠点を持つことで、両者のメリットを享受し、自分の可能性を拡大することにつながると感じます。

満田氏:会津は本当に働きやすい環境です。日本酒に限らず会津のブランディングにつながる価値創造に取り組む地域商社の役割を担いながら、この素晴らしいふるさとを、もっと元気にしたいですね

お問合せ先

アクセンチュア株式会社 中村・武藤

https://www.accenture.com/jp-ja?src=BADV

会津イノベーションセンター 
長田(オサダ)

電話 0242-28-2431

NEC

https://jpn.nec.com/

ゼビオコーポレート株式会社
プロジェクト推進室

https://www.xebio.co.jp/ja/
電話 024-925-2510

會津アクティベートアソシエーション
株式会社

https://aizu-aa.co.jp/
電話 0242-88-5855

(参考)平成26年度補正予算地域実証事業の取組内容はこちら
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