【取材日:平成30年9月4日】
子育て世代
地元雇用・地元ワーカー
1. 創業の地・富山で首都圏の仕事に取り組む
▲富山県経営管理部 五十嵐佳美さん
▲インテック常務執行役員・行政システム事業本部長 牧野賢藏さん
牧野氏:インテックは現在でこそ全国に拠点がありますが、創業は富山なんです。昭和39年にコンピューターを地域で共同利用するための富山計算センターとしてスタートし、総合ITベンダーとなりました。IT業界では業務の一部を海外に委託するケースが多いのですが、インテックは国内拠点での開発を要望されるお客さまの声にお応えし、首都圏からのアクセスも良くなった創業の地・富山で、高い生産性と品質をもって開発に取り組みたいと考えていました。そんな折に富山県からふるさとテレワークについてお話をいただきました。平成22年に高岡市に整備した「インテック万葉スクエア」を実施拠点としています。
五十嵐氏:実施にあたっては、インテックさんが事業実施主体、富山県が協議会の事務局運営と、国や市との連携調整、事業実施支援。そして高岡市が移住に伴う生活面での支援といった役割分担でコンソーシアムを構成して運用しています。
牧野氏:もともとあった拠点なので、セキュリティやネットワークに関わる部分は自社内で確立されていましたが、什器類、とくにテレビ会議に必要な機材は当事業で調達させていただきました。
▲インテック万葉スクエア テレワークオフィスの様子
従来は、東京で大きなプロジェクトがスタートすると、スキルを持ったメンバーが富山から東京に移って参画するしかありませんでした。しかし今ではテレビ会議の設備が整ったことによって、東京の同じ部屋にいる感覚で、このビルからプロジェクトに参画できます。富山にいる社員たちが、普段のオフィスにいるまま東京の仕事ができる環境を実現できたのは、大きなメリットになっていますね。
▲インテック 三坂将岐さん
三坂氏:加えて、今までは設備面の問題で、開発の主体は首都圏の部門が担い、私たちは会議に参加する形だったのですが、今回は多拠点と接続できるシステムを導入させていただいたので、地方も会議の主体となって他のメンバーを集めて会議ができるようになりました。これによって高岡も開発プロジェクトの主幹を担うことができるようになり、業務の幅が広がっています。
2. 花粉症から解放された人も!メリットは圧倒的な住環境
▲インテック 干場進二さん
▲インテック 山崎真さん
干場氏:私は、以前は東京で働いていましたが、出身は高岡市ではないものの富山県です。家のことなどで故郷に帰りたいと考えていたところ、高岡で拠点が整備されたと知り参加することにしました。私のほかにも、親の介護や定年後の継続雇用という形で高岡に来るなど、社員によって経緯は様々ですね。
三坂氏:私は関東出身で、富山に住むのは初めてです。今までは横浜で働いていたのですが、事業拡大にあたってセキュリティが最重要となり、セキュリティも整いテレワークも可能なインテック万葉スクエアを拠点に、大きな部署を立ち上げたという経緯です。
山崎氏:子育ては圧倒的にしやすいですね。育児休暇後にこちらで復職をした社員がいて、自転車で10分くらいの距離に住んでいますが、朝は近くの保育所に立ち寄って出社、時短勤務で早めに帰って夕方には自宅でお子さんの面倒を見ているそうです。住居と職場、そして保育所が近いのは子育てママにとってすごく助かりますよね。
干場氏:私はやはり通勤面のメリットを多く感じます。東京では満員のバスや電車での通勤でしたが、車通勤になりずいぶん楽になりました。昼食も並ぶことなく、ゆっくり好きなものが食べられます(笑)。
三坂氏:仕事の面では、打合せのための移動時間を業務に使えるのもメリットです。
プライベート面では、冬は毎週のようにスノーボードに行けるのが最高ですね。それから、空気がとてもきれいで、引っ越してから花粉症の症状がほとんど出ないのには驚きました。
山崎氏:テレビ会議でのコミュニケーションには不安がありました。会議開催の呼びかけに勇気が要りますし、進め方にも戸惑いました。
三坂氏:顔を合わせればわかる空気感がなかなか伝わってこないので、画面の先で話が弾んでしまうとなかなかこちら側から入り辛いですね。距離のギャップは感じます。ただ、慣れてくれば少しずつ解消はしていくと思います。
山崎氏:東京ではお客様と近いこともあり、現場のピリピリとした雰囲気やプレッシャーのなかでの仕事になることもありますが、高岡にいるとワンクッション置けるので少しマイルドになります。富山の時間の流れのなかで、自分のペースで仕事ができるのがメリットにもなっています。
見方を変えればメリットにもなるというのは、交通機関にも言えますね。富山では午後9時を過ぎると電車の本数が減るので、ずるずると仕事をせずにパッと切り上げて帰るようになりました。反面、車通勤の社員も多く、仕事帰りに飲みに行く機会が減って寂しいという意見もあります。
干場氏:それを良しとする人もいますので、まさに見方の違いですね。
3. なんでも“ちょうどいい”が高岡の魅力
▲高岡市 市長政策部 高田真樹子さん(右)、杉本圭さん(左)
高田氏:高岡市は、田舎暮らしでイメージされるような地域とは違い都市機能がそれなりに整っているので、都会から移住してもギャップをあまり感じません。都会ほど人も多くないので、心にゆとりをもって仕事ができるというちょうどいい環境が整っています。
終電は早くても交通手段はそろっていますし、子育て環境も整っていて待機児童はゼロです。食べものもおいしいですよ。
五十嵐氏:東京まで、新高岡駅からは新幹線で 最速 2時間20分ですし、富山駅からは2時間少しです。大阪へは電車で約3時間。名古屋にも車で3時間半と、主要都市へのアクセスには困りません。田舎と言いつつも交通インフラが整っているんです。
富山県は自然も豊かで災害も少なくて安全ですし、通勤時間も短い。物価も比較的安く、教育水準や女性の就業率が高めなのも、魅力ではないでしょうか。
五十嵐氏:県では今年度初めてサテライトオフィス誘致セミナーを東京で開催しました。
このセミナーはサテライトオフィスの誘致に取組む県内の市町村と、首都圏等の企業のマッチングイベントであり、このセミナーの結果、サテライトオフィス候補物件として立山町の廃校への視察が実現しました。また、「まちなか開業促進物件整備事業」を活用し、魚津市の空き店舗を改修してコワーキングスペースを作ったり、高岡市では『ふしき坂ノ上ヴィレッヂ』というコンテナショップをオープンしたり、具体的な事例も増えていますね。
4. お客様の不便を超える価値を提供する
五十嵐氏:まずはテレワーク設備をどう整えるかですね。廃校や空き家の活用は通信環境が大きな課題となります。そこをクリアして都市部と同じように仕事ができる設備が整えば、環境面など地域ならではのメリットを提示できるはずです。
山崎氏:テレワークで距離が離れると、一時的に生産性や効率が下がることがあります。とはいえそれは主にコミュニケーションに起因するので、双方の理解があってはじめてテレワークでの仕事が成り立つことを念頭に置くべきだと思います。
そのうえで、「生活の質が上がることによって仕事の質も上がる」といった、テレワークによるメリットをお客様や社内に示すことです。「いい仕事をしている」という共感が得られると、距離を超えた関係性が生まれ、より良い業務環境が構築できるのではないでしょうか。
テレワーク相談センター
0120-861009
9:00〜17:00(土・日・祝日を除く)
五十嵐氏:富山県での地方創生の一環として移住を促進するなかで、ふるさとテレワークを知りました。連携事業者を検討する際に重視したのは「女性が活躍できる仕組みづくりや働き方改革に積極的に取り組んでいること」でした。以前から県の事業にご協力いただいていたインテックさんに相談したところ、ご快諾をいただき、取組をスタートしました。実施地域として高岡市にもご協力いただいています。