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北海道美唄市

【取材日:平成30年10月2日】

子育て世代

地元雇用・地元ワーカー

企業誘致

地元テレワーカー70名! 北海道美唄市で広がるテレワークの輪

美唄ハイテクセンターは近代的な建物

札幌からJR特急電車で35分。広大な田園地帯が広がる美唄市は、基幹産業である稲作を始め、ハスカップやアスパラなどを特産とする農業の町です。そんな美唄市の中央を縦断するJR函館本線と国道12号線に沿うような好立地にある「空知団地」。その一角の美唄ハイテクセンター内に、美唄市のテレワーク拠点「美唄おしごとひろば『びーさて』 」があります。
都市圏の企業誘致や移住促進を担当する美唄市 経済部経済振興課の土屋貴久氏、「びーさて」を運営するポートヘフナー株式会社 の吉田翔平氏に、地元ワーカーをゼロから集め、登録者を広げてきた取組について伺いました。

目次

1.冬の美唄で行われた“命がけ!?”の社員研修プログラムが原点に

2.子育てママ世代のポテンシャルが絶対に力になると確信

3.「集まるのか?」という懸念を払拭した参加者のモチベーション

4.クチコミで広がった登録者。新しい才能が、新しい仕事を呼ぶ

5.テレワーク拠点を核に多彩な価値を組み合わせた「企業誘致」「移住促進」へ

6.本事例についてのお問合せ先

1. 冬の美唄で行われた“命がけ!?”の社員研修プログラムが原点に

美唄ハイテクセンターからは風光明媚な景色が広がる
▲美唄ハイテクセンターからの景色。工業団地に加え、ゴルフコースも併設する立地

ふるさとテレワーク推進事業に取り組むきっかけについて教えてください。

土屋氏:少し遡るのですが、テレワークの取組に先んじて、市が提案した社員研修プログラムがありました。ここ美唄は道内でも有数の豪雪地帯として知られるエリア。地元では厄介者の雪ですが、雪や冬の厳しさを活かした「ホワイトキャンプ美唄」というプログラムを用意したんです。
雪中でテント設営し、野外でクッキング、雪に囲まれたテントで宿泊する……。首都圏からの参加者にとってはある意味で命がけの厳しい環境ですが、それをチームビルディングに役立ててもらえるのではないかと考えました。

インタビューに応じていただいた美唄市経済部経済振興課の土屋貴久さん
▲美唄市 経済部経済振興課:土屋貴久さん

首都圏の人にとっては体験したことのないような過酷な環境ですね。まさに命がけです。

土屋氏:市の企業誘致へのアプローチとしては、まずは美唄に目を向けていただくため、社員研修プログラムを作成してモニターツアーを実施しました。その参加企業に、このテレワーク拠点「びーさて」の運営をお願いしているポートヘフナーさんもいらっしゃいました。
そんな縁もあって、当時新規事業であった総務省の「平成28年度予算 ふるさとテレワーク推進事業」を活用してポートヘフナーさんに進出いただき、テレワーク事業を開始しました。

究極のチームビルディングを目指して
▲社員研修プログラム「ホワイトキャンプ美唄」のパンフレット

ポートヘフナーと美唄市の関わりはモニターツアーからですか?

吉田氏:弊社の代表が20年ほど前に美唄市のシステム導入支援をしたというご縁があり、社員研修プログラムのモニターツアーに参加させていただきました。弊社としても子育てや介護などが理由で「フルタイムで働けない人」の仕事復帰をサポートできないかと考えていたところでしたので、ふるさとテレワーク推進事業に参画させていただいたという経緯ですね。

2. 子育てママ世代のポテンシャルが絶対に力になると確信

インタビューに応じていただいた美唄おしごとひろば「びーさて」を運営するポートヘフナーの吉田翔平さん
▲美唄おしごとひろば「びーさて」を運営するポートヘフナーの吉田翔平さん

ポートヘフナーとしては、テレワーク事業のビジネスの可能性をどのように捉えていましたか?

吉田氏:例えば子育てで仕事ができない女性を考えると、非常にコミュニケーション能力が高い方が多い印象があります。ママ友と交流し、新しい関係性の中で上手に自分を表現したり、イベントを調整したり。本当にもったいない才能が埋もれていると考えています。埋もれた力をテレワークで活かすことができれば、地域にとってメリットは大きいですし、ビジネスとしても大きな可能性があると思います。

ポートヘフナーは東京の会社ですが、吉田さんは美唄に移住されたそうですね。

吉田氏:私は生まれも育ちも神奈川ですが、東京で経験していたシステム運用業務のノウハウを地域のために活かせると思い、立候補して美唄に赴任することになりました。うちもまさに子育て世帯ですが、美唄には待機児童の問題もなく、子どもものびのびと過ごしてくれています。
通勤時間は15分で済みますし、冬季の雪についても雪かきを10分程度するだけですから、慣れれば問題ありません。通勤にかかるストレスは東京に比べてだいぶ少ないですね。

コンソーシアムには、「びーさて」が入居するこの美唄ハイテクセンターのほか、美唄未来開発センター、北海道情報大学などが参画しています。それぞれ、どのような役割分担になっていますか。

広大な土地が広がる空知団地
▲主要幹線道路も近い好立地に広がる「空知団地」。ゴルフコースも併設する

土屋氏:このハイテクセンターは昭和62年にできたオフィス機能を持った施設で、びーさてが入居していることもあり、今回のふるさとテレワーク推進事業の中心拠点です。隣接する「空知団地 」は94ヘクタールの誘致可能なエリアがあり、データセンター誘致の取組も行っています。
美唄未来開発センターは美唄市の第三セクターとして行政側のシステム運用などを行っています。今後「びーさて」との連携なども模索していければというところですね。

吉田氏:北海道情報大学さんには、テレワーカーさんへのセミナーなどをお手伝いいただいています。

3. 「集まるのか?」という懸念を払拭した参加者のモチベーション

びばいテレワーク推進セミナーには多くの方が参加されました。
▲平成29年3月に行われた「びばいテレワーク推進セミナー」の様子

テレワーカーの募集はゼロからのスタートだったのでしょうか?

吉田氏:そうですね。「びーさて」が開設された平成29年3月に「びばいテレワーク推進セミナー」という説明会イベントを行いました。正直なところ、セミナーを開催するまでは「本当に集まるのか?」という懸念は大きかったです(笑)。
ところが、セミナーには約60名の参加者があり、そのうち約30名から面談の申し込みを受けました。申込者は20〜30代の女性が中心で、ほぼPCの経験者ということもあり非常に順調な滑り出しでした。

美唄おしごとひろば「びーさて」始まる
▲「びばいテレワーク推進セミナー」のパンフレット

パンフレットの配布などは市でサポートしているのですか?

土屋氏:セミナーの開催などのイベント企画・実施については、美唄市で支援しています。市としても市内企業への雇用対策を行う中で、子育てや介護で「仕事をしたいができない」という潜在ニーズがあることは把握していたので、パンフレットは市内の保育所や子育て関連施設など、主なターゲットの子育てママ世代が集まる場所を中心に配布しました。

セミナーの後、面談に来た方々の印象はいかがでしたか?

吉田氏:皆さん非常に積極的で、仕事に対するモチベーションが高いのが印象的でした。面談申し込みをされた方とは、必ず1時間程度の面談をさせていただきましたが、「ウェブサイトの開発ができるようになるんですか?」「ぜひやってみたいといった、主体的な目標をお持ちでした。仕事をする喜びを感じていらっしゃるのがわかって、非常に心強かったですね。

「びーさて」のオフィスでノートパソコンで仕事に取り組む様子
▲美唄ハイテクセンター2階にある「びーさて」のオフィス

ワーカーの方のスキルアップはどのように行っていますか。

吉田氏:PCスキルやITリテラシーは人それぞれですが、本当に基本的なパソコンの使い方から、Excel講座、ビジネスマナー、セキュリティまで幅広い研修を行うことでボトムアップを図っています。
一方で、スキル以外の部分での「プロとして仕事をする心構え」も大切になってきます。弊社としても納品物の品質確保が重要になってきますので、登録ワーカーの皆さんには精神面でも「仕事モード」になっていただくことをお願いしています。その意味でも、実務はもとより基本的な研修についても、常に「対面」でコミュニケーションすることを大切にしています。

白を基調とし、自然光差し込む明るい雰囲気で、研修も行うこともできるような広いコワーキングスペース内観
▲自然光が差し込む明るいコワーキングスペース。研修などもここで行われる

4. クチコミで広がった登録者。新しい才能が、新しい仕事を呼ぶ

「びーさて」の立ち上げから1年半ほどになります。テレワーカーの数に変化はありますか。

吉田氏:テレワーカー登録者状況としては、今年(平成30年)10月の時点で67名となっています。当初は今年度で延べ50名を目標としていましたので、目標を超える体制を確保できています。

土屋氏:今年2月には「びばいテレワーク推進セミナー」の第2回目を行い、テレワークの裾野を広げる活動を行っています。実際の登録者にもつながっているということで、テレワークという働き方が少しずつ浸透してきたという手応えを感じています。

びーさてで働きませんか?
▲今年(平成30年)2月に行った第2回セミナーのパンフレット

多くの方が参加され、説明を聞いているセミナー当日の様子。
▲セミナー当日は約50名が参加した

業務内容としては、どのようなものがありますか。

吉田氏:受注実績としてはWeb上での情報収集やDM配信といった「データ入力系」の業務、文章の校正や作成などが中心になります。先進的なところではAIの技術開発における学習データの制作などもあります。

それらの業務は、東京のポートヘフナー本社からのものでしょうか。

吉田氏:東京から来ているものもありますし、周辺地域から「びーさて」に直接打診があったものもありますね。

土屋氏:本年度、市内企業の紹介冊子のデザイン・制作業務を発注しました。クリエイティブな仕事にも十分に対応出来ますし、企業の方々も出来映えに喜んでいました

吉田氏:デザインスキルやイラストスキルのある方に登録していただいたことで、「びーさて」として受注できる仕事の幅が広がっているのは嬉しいですね。セミナー参加者だけでなく、スタッフによるクチコミでも多彩な才能が揃いつつあります。
また、立ち上げから登録していただき、ワーカーのリーダー的存在として引っ張ってきてもらった方を、ポートヘフナーの現地採用スタッフとして雇用することができました

登録ワーカーから現地採用になった方が、別の方へパソコンの画面を見つつ指導している様子
▲登録ワーカーから現地採用となった置田さん(写真左)

順調に登録者が増え、受ける仕事の規模感も大きくなっています。体制としても、ワーカーさんが横並びの並列でいるのではなく、スキルの高い人により上位のポストを用意するなどの体制づくりも必要だと感じています。地元雇用も増やしていきたいですね。

テレワーカーが増えている中で、現地の方かつ、中心である20〜30代女性の常駐スタッフが確保できたのは大きいですね。テレワーカーの皆さんからは、「びーさて」での業務についてどのような声がありますか?

吉田氏:仕事の時間調整が柔軟にできて助かる」「地元でITスキルを活かす仕事をしたかったので嬉しい」「身体的な障害があってなかなか社会に出られなかったが、びーさてがきっかけとなり助かっている」といった声をいただいています。

5. テレワーク拠点を核に多彩な価値を組み合わせた「企業誘致」「移住促進」へ

順調に機能している「びーさて」ですが、今後の展望や取組について伺えますか。

吉田氏:業務の幅を広げる中で、他拠点との連携も視野に入れていきたいと思っています。他地域でもふるさとテレワークとして同様の活動をされている方がいらっしゃいますので、複数で連携することにより1カ所では難しい業務も可能になると思います。場所に縛られないテレワークの強みを活かしていきたいですね。

備え付けの大型のモニターが「びーさて」のロゴマークが映し出されている
▲コワーキングスペースにはテレビ会議機能も備える

土屋氏:時間や場所などにとらわれない新たな働き方の創出という視点でテレワーク事業に取り組んだところですが、市内にはテレワーク事業に対する一定の求職ニーズがあると感じています。また、テレワーカーが業務を通じてパソコンやIT技術のスキルなどを高めることにより、フルタイムでの就業が可能となった場合には、テレワーカーを卒業して市内企業へのフルタイム就職など、雇用対策としても有効と考えています。

一方、市民のテレワークに留まらず、「都市部から地方への人の流れにつなげたい」という思いも強く持っています。「びーさて」の機能は企業誘致にも活用できればと考えています。美唄市として、「びーさて」をパイプにした東京との窓口ができたのは、大きなメリットだと考えています。
美唄のように小さな街にとっては、吉田さんのような方が1人いらっしゃっただけでも、大きな影響があります。実際に登録している60名を越えるワーカーさんたちの生活に変化があったわけですから、市としても活力になっています
今後も移住して仕事を探すのではなく、「仕事とともに移住する」というライフスタイルの提案が大切になってくると思います。

吉田氏:美唄にお世話になって思うのは、皆さんとの「距離の近さ」なんです。これは本当に都市部とは全く違うところですね。近所の農家の方に、おいしい野菜のお裾分けを頂くこともしょっちゅうで、ありがたいですね。
あと、最後にぜひご紹介したいのが、美唄が誇るご当地グルメの「美唄やきとり」です。美唄やきとりがあったら、美唄から離れられなくなりますよ(笑)。

美唄やきとり、ぜひいただきます! 本日はありがとうございました。

お問合せ先

美唄おしごとひろば「びーさて」

https://porthofner.co.jp/bibai-telework/

美唄市 経済部経済振興課

https://www.city.bibai.hokkaido.jp/

(参考)平成28年度予算補助事業の取組内容はこちら
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