第一三共株式会社
■制度の整備状況
コロナ禍など非常時に関わらず、「テ
レワークが可能な業務に従事するす
べての社員」を対象に日数上限のない
テレワークを制度として導入しており、
第一三共株式会社単体だけではなく、
国内第一三共グループ共通の制度活
用ガイドとして「テレワークのしおり」や
マネジメント職※向けの「テレワーク適
用ガイド」(後述の「周知・啓発方法」を
参照)を設けている。
会社概要
基本的な事項
組織名
名称:第一三共株式会社
創立:2005年
組織代表者
役職代表取締役社長兼CEO
氏名眞鍋淳(まなべすなお)
業種医薬品
所在地東京都
総従業員数(単体)約5,700人(2021年4月時点)
テレワークの導入形態
終日在宅勤務部分在宅勤務
モバイル勤務サテライトオフィス勤務
テレワークの利用者数(過去1年間)(単体)総実施者数4,793人(2020年7月単月・2021年4月単月の合算)
経営トップのリーダーシップのもと、「DSSmartWork」として、働き方や仕事の
見直し・意識行動変容による一人ひとりの生産性向上とエンゲージメント向上に取り組
んでいる。その一環として、テレワーク制度の拡充促進にも取り組んでおり、最適な働
き方を選択できるような環境整備のもと、多様な社員がテレワークを活用している。ま
た適正な労働時間管理や長時間労働の防止対策を徹底するとともに、テレワーク下に
おけるコミュニケーションの促進、新入社員・異動者へのケア、マネジメント支援等にも
注力している。
(画像1第一三共グループテレワークのしおり)
17
※第一三共グループでは、管轄組織の責任者として、業績や人材の管理に対して責任を負う本部
長・部長・グループ長をマネジメント職と定義している。
■経営上の位置付け
グループビジョンの実現とアフターコロ
ナを見据えた持続的成長に向け、経営トッ
プのリーダーシップのもと、「DSSmart
Work」として、働き方や仕事の見直し・意識
行動変容による一人ひとりの生産性向上とエ
ンゲージメント向上に取り組んでいる。
その一環として、生産性の高い働き方と効果的な時間活用を目指し、テレワーク制度の拡
充と活用促進を図っている。全社アンケート調査によってテレワークにおける課題を検証し、
適正運用に向けたガイドライン作成、セミナー実施、マネジメント職の労務管理支援のための
勤務可視化ツール、PCログ表示等を順次導入・実施している。
テレワーク制度の拡充と活用促進を目的として、2020年度に対象者の拡大(定時間制以
外の全社員)、勤務場所の柔軟化、申請手続きの簡素化を行った。2021年度には、定時間
制を含む全社員への制度拡大、終日テレワーク上限回数の廃止等を実施した。
■周知・啓発方法
全社員向け「テレワークのしおり」やマネジメント職向け「テレワーク適用ガイド」を整備してお
り、テレワークの基本方針・意義や適正運用のポイントの他、制度活用上のガイドラインとして、業
務環境の整備、勤務管理・健康管理、職場コミュニケーション、情報セキュリティ、テレワークを有
効に活用するための参考情報などを周知している。また、「テレワークのマネジメント」、「メンタル
ヘルスセルフケア」、「労働時間制度」、「メンタルタフネス度向上」、「情報管理・セキュリティ」な
どのテーマでセミナーやeラーニングも実施している。
■人事・労務管理の整備
【労務管理の運用ルール】
テレワーク下でもより客観的な労働時間把握を行えるよう2020年6月に、PCログの表示
をフレックスタイム制や定時間制の社員に導入し、2021年4月にはマネジメント職を含む全
社員に適用拡大した。PCログによる客観的時間が自動記録された上で、各自が自身の勤
務時間を勤怠管理システムに入力している。また、法的義務の遵守や社内における労働
時間の目標値達成・意識醸成のため、労働時間や休暇取得等をグラフ化する第一三共グ
ループオリジナルのツールを開発し、2021年7月より導入した。
(画像2DSSmartWorkの目的)
18
【人事評価面での取組】
2021年度より、テレワークか否かにかかわらず、マネジメント職の業績評価に生産性指標を
組み込むことで、生産性を重視したマネジメントへのマインドシフトをはかっている。また、生産性
向上のための具体的な取組に関して各組織内で上司と部下の積極的な対話を促している。
■情報通信環境の整備
【環境整備の工夫】
固定電話を廃止し、テザリング可能なスマートフォンを全社員に貸与している。貸与PC
はカメラ付きでタブレットモードでも利用できるなど、高スペックなPCに置き換え、オンライン
上のコミュニケーションツールは順次機能を拡大している。また、ペーパーレス化推進のた
め、経費精算システムの刷新、名刺管理システムや音声議事録アプリの導入、社内資料
の電子化や押印廃止を行った。
【サテライトオフィス】
首都圏のグループ内事業場にサテライトオフィスを設置しており、予約アプリを用いるこ
とで、普段は当該事業場以外で働いている社員も利用できる。所属オフィスと同様の通信
環境にて、複合機やシュレッダー等も利用可能である。
ワーク・ライフ・バランスに関する事項
■健康で豊かな生活のための時間の確保
【労働時間の工夫】
コアタイムなしのフレックスタイム制を導入しており、始業・終業時刻の柔軟な設定、勤務
時間中の私用による中抜けが可能である。「定時間制」社員に対しても、2021年4月付で
テレワーク制度の適用を拡大したことで、全社員がテレワーク可能となった。
※定時間制は国内グループ会社において製造業務従事者が多くを占めている。テレワー
クの適用拡大をしたことで、テレワーク利用可能者が「100%」となり、2021年4月(単
月)の調査では、実際の利用率はグループ全体で「約72%」という状況である。なお、定
時間制では、製造業務がない場合の各種資料作成やデータ作成といったデスクワーク
やオンライン研修の受講をテレワークで行った事例がある。
【健康確保に向けた工夫】
テレワークにかかわらず、第一三共グループの方針として、休日・深夜労働は原則禁止し
ており、テレワークにおいても同様である(上長判断により真に必要な場合のみ可)。併せ
て、会社全体として時間外労働(休日含む)の上限を設定しており、グループ全事業場に
おいて毎月、労働時間管理委員会を実施することで、労使協働して時間外労働や休日労
19
働の削減に取り組んでいる。これらの結果、グループ全体の「平日時間外労働時間(所定
外相当時間含む)+休日労働時間」は年々減少しており、2020年度は、2019年度と比較
して約20%減少した。また、マネジメント職を対象としたアンケートでは、2020年7月と2021
年4月で比較し、「部下の健康状態の把握が困難」との回答が11%減少、「部下の労働時
間の把握が困難」との回答が10%減少した。
加えて、11時間の勤務間インターバルを設定しており、11時間の確保ができていない場
合には、社員が日々入力する勤務管理システムにおいてアラートを表示し、インターバルの
確保を促す注意喚起を行っている。
【時差を伴う業務への配慮】
時差を伴うグローバル業務を担う社員が、欧米とテレビ会議を行う際には、テレワークを
推奨している。また研究開発部門では、時差を考慮し、会議を設定しない時間帯などを設
ける等の工夫を試みている。時差を伴う深夜に開催される海外学会等へのWeb参加の
際には、テレワークの活用はもちろんのこと、健康確保の観点から、11時間以上のインター
バルの確保、真にやむを得ない事情でインターバルを確保できない場合には、就業途中で
の休憩確保・早めに終業するなどの代替策を講じている。
■就労による経済的自立、多様な働き方・生き方の選択
【多様な人材の活躍】
従来採用していた身体障がい者に加え、2020
年度より採用を始めた精神障がい者においても
出社とテレワークを有効に併用しており、テレワー
クが誰もが活躍しやすい環境作りに大きく寄与し
ている(精神障がい者は2020年度に1名採用、
今後も採用を拡大する予定)。
また、世代を問わずテレワークの活用が進ん
でおり、60歳以上の社員の約80%がテレワーク
を利用している(2021年4月単月)。
【育児・介護と仕事の両立】
育児や介護の必要がある社員についても、1
日のうちで複数回の中抜けや短時間での勤務
も可能であるとして、テレワークや各労働時間
制度のルールを正しく理解し、有効に活用する
ことを推進している。職種に限らず、子どもを養
育する社員の約70%がテレワークを利用している
(2021年4月単月)。
(図表160歳以上のテレワーク利用状況)
(図表2子どもを養育する社員のテレワーク利用状況)
60歳以上のテレワーク利用状況
(2021年4月単月)
■テレワーク利用1日以上■テレワーク利用0日
81%
19%
子どもを養育する社員のテレワーク利用状況
(2021年4月単月)
■テレワーク利用1日以上■テレワーク利用0日
73%
27%
20
【単身赴任のテレワーク活用】
自宅以外の社外で勤務する場合は、事前に
上長の許可を得た上で、単身赴任者の家族元
や実家などでも実施可としている。単身赴任を
行う社員の約65%がテレワークを利用している
(2021年4月単月)。
■社員の満足度
2020年7月に第一三共グルー
プ全社員に行った社内アンケート
における「テレワークによる業務
効率や生産性の変化」に関する
設問では、「大きな変化なし・向上
した・どちらかというと向上した」と
の回答が82%であった。
また、テレワーク実施者のうち、
82%が「通勤時間がなくなる」、74%
が「時間が有効に活用できる」、
68%が「柔軟な働き方ができる」と
いったメリットを感じたと回答した。
社内アンケートでは、「会議室の制約がなくなり、必要な打ち合わせが必要なタイミングで実施し
やすくなった」、「同僚のスケジュールや業務量を把握しようという意識が高まり、意識的な情報共
有や互いの勤務計画の共有が進んだ」、「早朝・深夜のグローバル会議による負担が軽減した」、
「通勤がない分、インターバルタイム以上の休息が確保できるようになった」、「今まで気づかなかっ
た非効率な業務プロセスの改善のきっかけになった」、「テレワークという選択肢により働き方の幅
が広がりワーク・ライフ・バランスが確保しやすくなった」といったコメントが寄せられた。今後もアン
ケートを実施し、これまでの「DSSmartWork」の取組の成果や課題を把握し、さらなる働き方
改革の推進に向けて取り組んでいく予定である。
(図表3単身赴任者のテレワーク利用状況)
(図表4テレワークによる業務効率や生産性の変化)
(図表5テレワークについて、効果(メリット)と感じる点)
単身赴任者のテレワーク利用状況
(2021年4月単月)
■テレワーク利用1日以上■テレワーク利用0日
65%
35%
Q.テレワークにより、業務効率や生産性(時間あたり成果)は
どのように変化したか
■①向上した■②どちらかと言うと向上した■③大きな変化なし■④どちらかと言うと低下した■⑤低下した
0%10%20%30%40%50%60%70%80%90%100%
16%26%40%15%4%総計
Q.テレワークについて、効果(メリット)と感じる点【複数選択可】
⑤通勤時間がなくなる
②時間が有効に活用できる
①柔軟な働き方ができる
③業務に集中しやすい
⑥家族と過ごす時間が増える
⑦自己研鑽など仕事以外の時間が確保…
④業務の計画性や自己管理意識が高まる
⑧育児・介護と仕事の両立がしやすくなる
⑨その他
0%20%40%60%80%100%
82%
74%
68%
38%
36%
33%
32%
20%
6%
21
マネジメント職向けの「テレワーク適用ガイド」では、新入社員や異動者、その他留意すべ
きケースにおけるテレワークの適用方針や実施する場合の留意点などを周知している。ま
た、新入社員や異動者に対するフォロー調査実施や個別相談窓口の開設によって、職場で
の関係構築が十分でない社員のケアを強化している。特にコロナ禍においては、感染対策の
ためのテレワークを優先せざるを得ず、例年と比較し同僚とのコミュニケーションが不足しや
すい環境であったため、フォロー調査で低スコアであった社員に対しては、現場の上長などと
連携して早期に対策を講じることで、社員の心身のケアや安定的な職場定着を促している。
管理職向けのマネジメント支援
マネジメント職を対象に、テレワーク下におけるマネジメント手法の研修や対話会を実施し
ている。2020年12月に、全社のマネジメント職を対象に「テレワークにおけるマネジメントセミ
ナー」をWeb会議で実施し、ほぼ全てのマネジメント職が参加した。大変好評で、セミナー後
にもアーカイブ配信を行った。
また、セミナー後には部門ごとに、マネジメント職同士のオンライン対話会を実施した。例え
ば、研究開発部門では「テレワークでのマネジメントにおいて日頃どのような課題や悩みが
あるか」を事前アンケートで収集し、改善策・対応策について、対話会にてグループで意見
交換・全体共有を行った。意見交換の中では、テレワーク下でのコミュニケーションの工夫、
Web会議の有効な活用方法・会議の進め方の工夫、新入社員や異動者への対応等がテー
マとして挙げられた。オンラインでの対話会は慣れない試みであったが、チャット機能を活用
して全員参加とする工夫を行うことによって発表者以外からも意見が出やすくするなど、参
加者の実体験を共有できる有効な対話の場となった。
第一三共株式会社
新入社員や異動者へのケア
22
事例検索へ戻る事例検索へ戻る