10
株式会社沖ワークウェル
当初より在宅勤務を社是とし、常にテレワークの制度やシステムの改善に取り組んで
いる。10年以上にわたり重度障がい者雇用を実施している。
会社概要
テレワーク実施に関する企業等の取組概要
組織名
名称:株式会社沖ワークウェル
創立:平成16年
組織代表者
役職取締役社長
氏名津田 貴(つだ たかし)
業種情報サービス業
所在地東京都
従業員数総従業員数75人(平成28年8月時点)
テレワークの導入形態
終日在宅勤務モバイルワーク
サテライトオフィス
テレワークの利用者数(過去1年間)57人(平成28年8月時点)
■制度の整備状況
「重度障害者の在宅勤務を特徴とする特例子会社である」ことを社内外に示している。
なお、社員全員参加の改善提案制度により意見を吸い上げ、障害者が在宅勤務しやすい環境改善に
継続的に取り組んでいる。
テレワークの対象者の範囲は原則社員全員。元々は障害者雇用のために通勤が困難な重度障害者の
みを対象にしていたが、健常の通勤社員においても「親の介護」、「育児」、「大型台風」、「一時的な怪我」、
「家族の看病」など、「通勤は難しいが仕事はできる」という場合は、補完的に在宅勤務を取り入れている。
したがって通勤社員は普段からデスクトップPCでなく原則モバイルPCを使用し、定期的に在宅勤
務の試行をしている。
■経営上の位置付け
経営トップ以下全員で、障害者雇用の方法として「通勤の困難な重度障害者が在宅勤務する」こと
に取り組んでいる。
11
■情報通信環境の整備
在宅勤務者は、自宅からインターネットVPNで、会社のLANに接続している。電子メール、ファ
イルサーバ、イントラネットが利用可能で通勤社員と同様のパソコン利用環境である。
自社製品のコミュニケーションツールの使用によりオフィスに居るのと同等のコミュニケーション
が可能で、バーチャルオフィスを実現している。
また、パソコンは個人用パソコンの業務使用は禁止とし、通勤社員と同様に業務用パソコンを支給
している。サーバのアクセスなどにおいては、インターネットVPNで社内LANに接続することによ
りセキュリティを確保している。
【注】コミュニケーションツールは、業務時間中に社
員が常時起動しておく音声コミュニケーション
システム。業務中の社員の氏名が表示されてい
たり、離れたメンバー全員がオフィスに居るの
と同等のコミュニケーションが可能で、バーチャ
ルオフィスを実現している。
他社との打合せ時では、管理者がモバイル環
境でコミュニケーションツールを起動し、全国
に在住する在宅勤務者もお客様との打合せに参
加している。お客様も直接作業者と具体的な意
識合わせができることで安心感が持てたり、テ
レワークの現場が体験できたりしている。
■業務プロセス、組織風土の改善
在宅勤務者と同僚間の業務の可視化で最も課題になるのが「紙資料が見せられない」ことであるが、
オフィスでスキャンし、電子ファイル化し、ファイルサーバに取り込むことにより、在宅勤務者と情
報共有することができている。
前述のツールの整備によって、在宅勤務者であっても通勤社員と変わらず定例会議、緊急打合せ、
勉強会、面談などが可能であるため、業
務の切り分けは、特に行っていない。
成果物はファイルサーバに保存したも
のを自社製品のコミュニケーションツー
ルで話をしながら一緒に確認し可視化し
ている。
在宅勤務者のリーダークラスは、在宅
勤務者のチーム作業を取りまとめること
が主な役割であるが、新人育成、災害時
の安否確認訓練、懇親会など会社行事の
企画運営にも深く関与し、在宅勤務者と
通勤社員が一体化するような組織風土を
つくるよう努めている。
顧客
コーディネータ
WWC
客先にモバイル端末を持ち込み
在宅での会議参加
在宅ワーカー
顧客先
仕事依頼仕事指示
コーディネータ
仕事依頼仕事指示
クライアント
在宅勤務者(ディレクター)
以前の運営在宅勤務者
最近の運営
12
テレワークによって実現したワーク・ライフ・バランス
■労働時間の柔軟性
以下の理由から個人の裁量で自由に労働時間を設定できる在宅勤務制度は設けていない。
①オフィス社員同様チームでコミュニケーションを取りながらプロジェクトを進める必要があるため、
なるべく勤務時間帯は一緒にする。
②重度障害者のため、不規則な生活になって健康を害するリスクを避け、介助ヘルパーや通院を考慮
し個人別に若干のフレックスタイムを運用している。
■アピールしたい点
通勤の困難な重度障害者のための完全在宅勤務を行っている。
「インターネットVPNによる社内LANへの接続」と「自社製品のコミュニケーションツールを利用し
たコミュニケーション環境」により、自宅でもオフィスにいるのと同じようなバーチャルオフィスを
実現している。
バーチャルオフィスの実現により、テレワークでは一般的に課題となっている次のような不安を解
消している。
①コミュニケーション
オフィス社員と同じようにすぐに声をかけたり打合せができる。
②労務管理
「業務の開始、終了時に社員全員にメールを出す」自社製品のコミュニケーションツールに業務中社
員の名前が表示されており、いつでもすぐに声をかけることができる」などにより、特別な労務管
理を必要としない。
③業務の切り出し
オフィスでパソコンを使っておこなう業務は原則何でも可能である。不可能な業務は、物理的にユー
ザー先や現場に行かなくてはならない業務に限られる。
④スキルアップ
通勤社員と同じように研修会やチームでの勉強会などを開催している。
⑤人事評価
「いつでもコミュニケーションが取れる」「定例会議や臨時打合せなどが自由にできる」「成果物はファ
イルサーバからすぐに確認できる」などにより勤務状況や成果物の把握が容易であるため、通勤社
員と同じような人事評価が可能となっている。
13
株式会社沖ワークウェル
■就業場所の柔軟性
通勤の困難な重度障害者の在宅勤務を特徴としており、自宅を就業場所とすることを就業規則に規
定している。
■ライフイベントに合わせた働き方
○小学生の子を持つ社員において、子供が病気で学校を休んだときや、PTA役員による登下校見守
りの役割がある日に、業務時間確保のために在宅勤務を実施した。
○地方に住む一人暮らしの高齢の親を持つ社員において、自治体に介護サービスの申請手続するた
めに、数週間地方の実家での在宅勤務を実施した。
■女性・高齢者・障がい者の活用
○障害者雇用の一環で、通勤の困難な重度障害者の在宅勤務を特徴としている。
○重度の障害はあるが情報処理技術を持つ在宅勤務者が、ソフトウェア開発業務をしている。
○肢体不自由特別支援学校に通う障害児は、通勤が困難なため卒業後の就労が大変厳しい状況にあ
るので、特別支援学校と連携し、在宅就労に関する出前授業や遠隔職場実習(生徒が自宅や学校
で受ける在宅勤務形式の職場実習)を実施している。
○生徒たちの就労意欲やIT能力などが高まってきており、肢体不自由特別支援学校からの在宅勤務
者の採用が増えてきている。
■やりがい、労働生産性の向上
通勤の困難な重度障害者は、在宅勤務制度がなければ就労することが不可能である。在宅勤務によっ
て就労が可能になり社会参加できることで、障害者にとって生きがいになっている。
重度障害の在宅勤務者は入社当初から在宅勤務であるが、通勤していたとしても生産性は特に変わ
らないのではないかと捉えている。
■アピールしたい点
ネットワークやIT機器が発展してきた現代において、企業にとっては今後の障害者雇用形態として
適していると認識している。また、これまで就労が適わなかった通勤の困難な重度障害者にとっても、
就労による社会参加が可能になり大きなメリットとなっている。
元々は通勤の困難な重度障害者の在宅勤務を特徴としていたが、子供を持つ社員や親の介護が必要
な社員も適宜在宅勤務を行っている事例もあり、プライベートと仕事の両立が可能になっている。
爆弾低気圧やインフルエンザ流行などで外出が規制される場合などでも、通勤社員が臨機応変に在
宅勤務することで、安全確保と事業継続が可能になっている。
事例検索へ戻る事例検索へ戻る