令和2年度第2回取材記事
移動や情報伝達を飛躍的に効率化するテレワーク
パソコンやスマートフォンを活用して、農業でのテレワークを実践している(有)トップリバー。今年度の取り組み内容、農閑期のセミナー、今後のテレワーク活用などについてお話をうかがいました。
専務取締役 嶋崎 田鶴子さん
コロナ感染防止対策としての畑への直行直帰がテレワークで可能に
今年度、実際に行った取り組み内容をお話しください。
2020年4月に緊急事態宣言が発出されたとき、社内のテレワーク環境を確認した上で、まずは事務や総務で在宅勤務を行いました。次いで、農作業においても、パソコンやスマートフォンから社内サーバーへアクセスして情報伝達が問題なくできることが分かり、実践していきました。
たとえば畑にいるとき、事務所に戻らなくても、販売や栽培などに関する必要な情報をスマートフォンからダウンロードして参照できます。また、就農を研修している営農社員が体調を崩したことがありましたが、コロナの感染防止対策として、回復後も2週間は事務所に立ち寄らずに自宅と畑との直行直帰にするという対応をとることもできました。畑では一人でできる作業を行い、2週間経過するまでは他の社員と一緒の作業は避けてもらいました。事務所に来なくても仕事や連絡ができる環境が整っているからこそ、可能になったことだと思います。
農閑期は畑での作業がなく、営農社員は勉強や作付け計画を行っています。現在は出社か在宅勤務かは社員の選択に任せています。県外の実家へ帰らなければならない用ができた社員には、実家からアクセスすることを許可しました。年末年始に県外に帰省した社員たちは、長野県に戻ってきてから1週間経過してから出社としました。
セミナーのオンライン受講は移動時間や交通費を削減
会議やセミナーへのWeb活用はいかがですか?
現在では、Web会議はすっかり当たり前になりました。例年、農閑期に開催している社内セミナーにもオンライン形式を取り入れました。昨年度までは事務所へ講師が来て、スクール形式で社員たちが話を聞くスタイルでしたが、今年度は講師に今までどおり事務所に来てもらう場合と、オンラインで話をしてもらう場合の両方を行っています。受講する社員も、事務所へ来て視聴することも、自宅で視聴することも可能とし、各自の選択に任せました。
オンラインセミナー受講の様子
社外のセミナーもオンラインで受講できるものが増えました。交通費や移動時間がかからず受講できることは大きなメリットです。これまでは2時間のセミナーへ参加するために、移動時間を含めたら丸一日必要な場合もあり、派遣できる人数は限られていました。オンライン受講では2時間で済むため、受講人数を増やせています。
また、当社主催のオンラインセミナーを準備中です。長野県内の農業関係者向けのセミナーで、当初は長野市内の会場使用も検討しましたが、Web開催が受け入れられました。移動がないので、参加者は県内の幅広い地域に及ぶ予定です。
社内にすんなりと根付いたテレワーク
今年度のテレワークの進み具合を振り返っていかがですか?
全体としては予想以上にテレワーク活用が進みました。現在、営農社員の30%がテレワークをしています。平均して週1~2回程度の利用となっています。テレワークをしていない社員も、テレワークへの抵抗感はほとんどありません。社員全員の考え方が変わるにはもっと時間がかかるかと思いましたが、杞憂でした。
テレワークをすることを目的とするのではなく、どんな場所でも仕事ができる環境を整えることを重視しています。コロナ禍を含め、社会情勢などにより仕事ができる場所が限られた場合も、社員が業務を遂行できる環境づくりを進められています。
ここまでの取り組みで課題と思われたことは何でしょうか?
人と人とが直接会えないというストレスはあり、解消できるよう工夫していかなければならないと感じています。そして農産物を作ることは、実際の畑から遠く離れてはできません。農業でのテレワーク利用は、農閑期に在宅でもできる業務が主となると思います。
今後のテレワーク活用・拡大予定をお聞かせください。
現状の方針を維持しながら、オンライン決裁の導入も視野に入れていきたいです。また、営農社員がオンライン上で経過を報告することをルール化して、何がどう進んでいるのかを可視化していきたいです。
Web会議も継続していきますが、各農家と実際に会って話してコミュニケーションをとることも必要な場合があります。会わなければならない内容かどうかを精査して、Web会議にするか、現地へ出向くかを考えていくことになるでしょう。それでも、直接訪問以外の選択肢が増えたことは大きなプラスです。