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日本オラクル株式会社
東日本大震災時、テレワークで事業継続するなどの先進的取り組み企業としての実績。
ワークスタイル変革のメッセージを発信。
会社概要
テレワーク実施に関する企業等の取組概要
組織名
名称:日本オラクル株式会社
創立:昭和61年
組織代表者
役職代表執行役社長兼CEO
氏名杉原博茂(すぎはらひろしげ)
業種情報通信業
所在地東京都
従業員数総従業員数2,526人(平成28年8月時点)
テレワークの導入形態
終日在宅勤務部分在宅勤務
モバイルワークサテライトオフィス
テレワークの利用者数(過去1年間)2,000人(平成28年5月時点)
■制度の整備状況
ニーズのある部門・人から小規模で試験導入を始め、効果検証後、より大規模に展開する方式をとっ
た。効果検証段階では、十分な説明や実施におけるヒアリングを行い、成功率を上げることや、フィー
ドバックに基づく改善を行い、その上で全社展開を行った。
導入検討当初(平成14年)は、育児を理由に通勤が困難となった優秀技術社員の定着施策の一つと
して、試験的に導入した。
一定の効果が認められたことから、カスタマーサポートサービス部門に所属する社員(当時約300名)
を対象に実証実験を実施した。その上で、正式に全社員を対象とした在宅勤務制度を平成16年に運用
開始した。基本的に全社員、全職種が対象であるが、ラインマネージャー及び人事部門長の承認が必
要である。
■経営上の位置付け
経営層から「NewWorkstyleStartforVision2020:ワークスタイル変革について」というメールを
配信し、本社オフィス従業員を対象に次の4つを推進している。
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①組織の境界を越えたプロジェクト型協働の実現、優秀人材の共有化・活用強化
②短い就業時間での生産性向上
③場所を選ばない働き方(Work@Everywhere)
④固定席ではなく、出社時に空いているデスクを自由に選べるフリーオフィスを設定し、テレワー
クでも出社ワークでも清潔かつ快適な就業環境の実現
■周知・啓発方法
社内のマネージャー研修で周知するほか、実際に運用し、従業員も実際に体験することで、意義や
メリットを体感し、推進している。
《運用事例》
○社内会議には、リモート参加する社員がいることを前提とし、会議設定者が必ず電話会議・Web
会議、資料の事前共有、議事録の共有を行う。
○技術情報、優良事例は社内インフラの部門関係者しかアクセスできないハイセキュリティにて随
時更新して共有する。
○チャットツールを常に利用可能な状態にしておき、いつでも気兼ねなくオンラインで会話ができ
る環境にしている。
○スケジュール管理、業務の対応案件数、顧客対応内容については、分析ツールを使い、マネージャー
がリアルタイムで確認できる仕組みにしている。
○マネージャーと部下の1対1の面談は定期的に対面で行い、電話ではわからない表情などを把握
しながら密度の濃いコミュニケーションを行っている。
○台風や地震などの自然災害が予想される場合や交通機関の問題発生時等には、テレワークの利用
を推奨し、社員全員での活用を促している。
■人事・労務管理の整備
【開始・終業】
開始とともにチームに業務開始メールを配信し、チャットツールを立上げ、その間は自由に会話・
電話・メールできる環境にしている。また、終業時も同様に、業務終了のメールをし、当日の業務内
容を上司・チームに共有している。
その日に何を行ったか、顧客対応の案件数、内容などツールによって共有されている部門や、それ
がない場合は、上司に成果物または作業内容をメールで送付している。
【人事評価】
在宅でも会社でも最終的に評価されるのは業績である。ツールによるパフォーマンス目標設定、上
司との面談で評価レビューを実施している。また、不公平感、不信感が出ないよう、情報共有やコミュ
ニケーションには留意している。
■情報通信環境の整備
1人1台ノートPCを貸与。外部持出しも想定し、ハードディスクの暗号化ソフトにより、データ保
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護を図っている。
社員への支給携帯電話は、スマートフォンを導入し、タブレットも使用可で、セキュリティや紛失
時の遠隔リセット設定を徹底している。社内ネットワークにはVPNを使用し、インターネット接続環
境であればどこからでも接続を可能としている。オフィスの電話はログインすれば場所を問わず自分
の電話番号で内・外線とも受話を可能としている。また、電話会議により、異なるロケーションから
同時に電話で会議参加することが可能。
特定ツールを使用し、Eメール、カレンダーなど、離れた場所の社員同士の業務スケジュールやプレ
ゼンスの確認も容易となっている。情報共有ツールを利用し、世界中の社員がセキュアな環境で、資
料を共有し、作業を進めることが可能となっている。カンファレンス機能では、参加者が相互にPC画
面を共有し、各種資料をリアルタイムに見ながら議論できる。
■業務プロセス、組織風土の改善
【業務可視化】
開始時に当日の業務予定を、終了時にその日行った業務内容を上司やチームに共有している。
顧客対応の案件数、内容などは自社ツールによって共有されている。
スケジューラー(カレンダー)に各自予定を入力しておくことにより、客先直行、直帰を都度上司
に報告しなくても良い運用になっている。
【同僚とのコミュニケーション】
開始・終了時にメールを配信すると共に、チャットツールを立上げ、その間は自由に会話・電話・メー
ルできる環境にしている。また、カメラつきPCで顔の見える会話も行うようにしている。社員同士の
時間外のコミュニケーションを促進するため、飲食代を福利厚生費のポイントで精算できるようにし、
テレワーク以外の日にランチをするなど、コミュニケーション促進の工夫もしている。
■アピールしたい点
テレワークの実践企業が少ない平成14年から在宅勤務の試験的運用を開始し、平成16年に規定化し、
全社員を対象とした在宅勤務制度を展開した。Work@Everywhereをコンセプトとして、テレワーク
先進的導入企業として、10年以上の運用実績がある。
その間、新型インフルエンザなどのパンデミック対応や、東日本大震災発生時の事業継続に対して、
非常に有効であった。
また、ワーク・ライフ・バランス(育児・介護など)推進や、職種によって働き方が多様化する中、
より効果的に成果が出せる勤務形態の選択肢の一つとして、継続的に活用されている。
テレワークには会社、業務、ITのクラウド化が必須となってくる。当社は「社会に貢献するクラウ
ドカンパニー」として、お客様へのクラウド導入を推進していくとともに、導入後の理想業務形態を
示す会社(ショーケース)として自社の最先端のITソリューションを活用することで、対外的にPR
する役割も担っている。特にPOCO(ThePowerofCloudbyOracle)をスローガンとして、ワーク
スタイルの更なる革新を推進中である。
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テレワークによって実現したワーク・ライフ・バランス
■労働時間の柔軟性
社員各自が、担当業務の成果を最大限発揮し、場所や時間に依存しないより効率的で柔軟な働き方
を追求している。
具体的には、裁量労働を中心としてみなし労働制度を幅広い職種に適用し、かつ在宅勤務制度は本
人申請・上司承認で全社員・全職種が利用可能である。
育児、介護などの事情がある社員は、申請し、本人申請・上司承認後、一定期間において「時間限
定勤務」、「時短勤務」を利用することが可能である。
■休暇の柔軟性
年次有給休暇は、勤続年数に関わらず、毎年20日を付与し、勤続年数の浅い社員もワーク・ライフ・
バランスを考慮し、休暇取得しやすい労働条件としている。
社員のプライベートでのイベントに対して「特別有給休暇」を運用している。
社員自身の病気・怪我や親族の病気・怪我に対する看護に対応する場合は「傷病休暇」の適用が可
能。具体的には、年間5日の有給休暇を適用し、それで足りない場合は、子の看護、親族の看護用途
で別途各10日の無給休暇を利用可能としている。昨年度実績として1,135名が当該休暇制度(有給部分)
を利用している。産前休暇は、法定日数を上回る産前8週目から適用可能としている。介護休業制度は、
法定日数を上回り、半年間の利用が可能としている。
■就業場所の柔軟性
会社として「Work@Everywhere」を基本コンセプトとして、社員各自が自身の業務成果を最大化
できるため、就業場所も大幅な柔軟性を持った運用を可能としている。
職種に応じて働く場所は様々であり、コンサルタントは顧客先事業場での常駐勤務もあり、一方で
海外のチームと常態的に業務遂行している社員はほとんどオフィスに出勤せず、自宅を中心に作業し
ているケースもある。
また、営業職は社内外の移動も多いため、PCのみならずスマートフォンやタブレット端末などのデ
バイスに依存せずに常時メールやスケジュール管理システム、社内基幹システム(決裁システム含む)
を利用可能なITインフラ、ツールを充実させている。
在宅勤務制度は、効率的に業務推進することを主旨とすれば、特段の事由(介護、育児等)がなく
とも本人申請・上司承認で利用可能としている。
在宅勤務は原則として「自宅」としているが、親族の介護においては、その限りではない。
ただし、在宅勤務制度は、あくまで会社(上司)が認めた場合に適用できる制度であり、社員の「権
利」ではない、としている。業務効率を考慮し、適用を認めない場合もある。
情報セキュリティについては、在宅勤務適用の有無に関わらず、Global共通の厳格な運用基準を設け、
全社員に対して適用している。また、定期的にコンプライアンス徹底のi-Learningを実施し、ルール
の理解と運用の徹底を図っている。
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■ライフイベントに合わせた働き方
勤務時間に対する柔軟性と併せて就業場所に対する柔軟性のある制度に加え、自社のITインフラ、
ツールも充実していることから、各自のワーク・ライフ・バランス推進において、会社は社員に多様
な選択肢を提供することができている。
在宅勤務制度において特殊事情に配慮するケースでは、育児休業復帰時の育児との両立、親族の介護、
怪我や病気への配慮といった事例がある。
《事例》
所属オフィスの通勤圏外に在住する親族の介護にあたり、親族宅での就業を認めるフル在宅勤務制
度を適用した。育児休職復帰間もない社員に、一定期間、フル在宅勤務を適用している。
(子供の体調不良など、不測の事態で託児施設からの引き取り要請がある場合、託児施設に近い自宅で
就業した方が効率的というケースを想定)
足を骨折した場合など、通勤困難であるものの、デスクワークにまったく支障が無い場合にフル在
宅勤務を適用した。「場所」ではなく、「時間」に対する配慮として、所定内労働時間のみ就労する「時
間限定勤務」と1日の就労時間を短縮する「時短勤務」を運用している。
《事例》
日々の勤務時間を所定労働時間で固定し、子供の託児施設への送迎に対応している。従来であれば、
「通勤」が不可能な状態では、休職もしくは退職を選択しなくてはならないケースでも、場所・時間の
柔軟性のある勤務制度により、「ワーク」と「ライフ」を両立可能とする継続的な勤務が実現できている。
■やりがい、労働生産性の向上
テレワーク実施により、従来であれば休職もしくは退職を選択しなくてはならない様なケースの社
員がリテンションできているということだけではなく、テレワークを利用できる制度が整っており、
約80%の社員が利用したことがあるという実績もあることから、以下のような声が届いている。
【やりがいや満足度向上】
○通勤時間短縮、ワーク・ライフ・バランス推進の効果で満足度が向上した。(通勤時間短縮により、
保育園送迎が可能になり、子育て中のワーキングペアレンツ社員には特に好評)
【生産性向上】
○顧客訪問が重なった場合も、オフィスに戻る必要がないため外出先のカフェ等で仕事ができて効
率的。
○久しぶりにテレワークを行った際、新しいアイディアが生まれるきっかけになった。(集中できる
ため、イノベーションが促進される)
○集中して企画立案、資料作成や翻訳等の業務ができた。
○時差がある世界各地域との会議にも自宅から参加ができる点がよい。
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日本オラクル株式会社
■生活面の向上
《家族との時間の確保》
通勤時間短縮により、今までより早めの時間に保育園送迎が可能になり、子育て中のワーキングペ
アレンツ社員には特に好評である。ボランティア、地域活動への参加は、ボランティア休暇制度や、様々
なボランティアイベントの紹介を全社メールで配信することにより推奨しており、参加者も多い。
最近のボランティア活動の例:児童養護施設の児童向けJavaプログラミング体験イベント、クリー
ンアップ青山・赤坂見附(オフィスの近所)活動
“Do,Big,Different”を合言葉に、社長自らが、社員に新しいことにどんどんチャレンジすることを推
奨し、多様性を推進しており、イノベーションや社員の気持ちの活性化につながっている。
■アピールしたい点
《テレワーク活用による社員へのメリット》
【勤務時間に対する柔軟性】
所定内労働時間のみ就労する「時間限定勤務」と1日の就労時間を短縮する「時短勤務」も運用
している。
また、仕事柄他国の社員等と夜中の電話会議がある社員にとっても、勤務時間を柔軟に変動させ
ることができ、好評である。
【就業場所に対する柔軟性】
通勤圏外に在住する親族の介護の場合、親族宅での就業を認めるフル在宅勤務制度を適用。
また、外出先のカフェで仕事ができ、帰社が不要なので、移動時間を有効活用できる。
《テレワーク活用による会社へのメリット》
多様な社員の定着に効果的である。柔軟な働き方を提供できているので、「これほどの頻度かつ煩雑
な手続きなく在宅勤務を使える会社はまだ少ないので、育児や介護との両立を考えると、他社へ転職
しようとは思わない」、という社員が多い。
高齢化社会の進行により、今後、従介護社員の増加が予想され、こうした柔軟な働き方による、退
職抑制の効果が大いに期待される。
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