テレワークを活用して労働時間の削減や障がい者・育児中の者などにとって働きや
すい環境を整備するなど、多方面でワーク・ライフ・バランスを実現している。
会社概要
組織名
名称:富士ゼロックス東京株式会社
創立:1981年
組織代表者
役職代表取締役社長
氏名冨田主税(とみたちから)
業種情報機器販売業
所在地東京都
総従業員数1501人(2017年7月時点)
テレワークの導入形態
終日在宅勤務部分在宅勤務
モバイルワークサテライトオフィス
テレワークの利用者数(過去1年間)764人(2017年8月時点)
■制度の整備状況
「オープンワーク制度」という名称で在宅勤務制度を導入している。
「オープンワーク制度」の目的は、働く「場所」の縛りを緩め、労働者の能力を最大限に発
揮し業務生産性を高めるとともに、広く人材を活用することで生産性を高めることにある。さ
らには制度を理解し活用することで、管理職のチームマネジメント力を強化することにある。
まずは2016年6月に、「育児・介護」に携る社員を対象に導入し、同年8月に全社員まで対象
を拡大した。
また、2014年10月より全社員を対象に、自社又は関連会社のオフィスをサテライトオフィ
スとして、利用できるようにしている。
モバイルワークについても全社員を対象として2013年12月より導入し、764人が1月あた
り約14回利用している。
基本的な事項
■経営上の位置付け
テレワークの実施は、労働時間短縮(長時間労働の抑制)と、より高い生産性・より創造的
な仕事を実践する観点から、「人」を中心に置いた同社の戦略目標のひとつであり、経営陣の
改善活動テーマとなっている。働きやすい職場づくり、柔軟な働き方の実践、公正な評価など、
全社横断のタスクも立ち上げている。
■周知・啓発方法
広報誌やイントラネットによるテレワークの周知活動を実施している。全社員に向け、制度
の目的を理解してもらい、利用を促進するための社内説明会なども実施している。
■人事・労務管理の整備
労務管理は勤怠システムを活用している。社員のパソコンの稼働時間をシステムで把握し、
本人申請の勤務時間との乖離をチェックしている(30分以上の乖離が生じると人事部門が確
認を実施している)。
テレワーク利用者についても、このシステムを活用することで、社員がオフィスにいなくて
も労働時間の管理が可能である。
■情報通信環境の整備
【在宅勤務(オープンワーク制度)】
対象者は、育児と介護を担う社員だけでなく、在宅勤務により生産性の向上が期待できる
全社員である。
対象者には、使用する端末の記憶容量を最小限にとどめ、基幹データベースやクラウド環
境での文書共有を徹底する仕様としたテレワーク専用のノートパソコンを支給し、基幹シス
テムへのリモートアクセス権限を与えた上で、在宅勤務を実施可能としている。
文書類は基幹システムで管理されたデータべースおよびクラウド上で共有している。内線
通話機能も有する携帯電話(オフィスリンク携帯)を支給し、希望者はWeb会議用にWeb
カメラの利用も可能となっている。
【サテライトオフィス勤務】
都内14箇所の自社および関連会社オフィス内にサテライト環境を確保している。内4箇
所はフリーアドレス化している。
すべての拠点は共通のセキュリティポリシーと入退館システムで運用しており、利用者が
所属するオフィスでの勤務時と同様の環境で就労可能であるほか、利用ガイドをイントラ
ネットで共有している。サテライトオフィスの利用者は、始業時・終業時の業務報告を行え
ば、特に申請等は不要で直行直帰が可能となっている。
また、外部のコワーキングスペースの利用についても、検討中である。
【モバイルワーク】
営業とSEの全社員にテレワーク専用のノートパソコンと基幹システムへのリモートアク
セス権限を与えテレワークを実施している。文書類は、基幹業務を支えるシステム(基幹シ
ステム)内のデータべースおよびクラウド上で共有している。また、クラウド型SFA(セー
ルスフォースオートメーション)を導入し、社内外を問わず、データ・情報の共有、活動管
理、商談管理、施策管理が可能としている。
ワーク・ライフ・バランスに関する事項
■健康で豊かな生活のための時間の確保
【労働時間の工夫】
職種の違いによる勤務時間を考慮して、テレワーク制度を有効活用できるように、「協働
タイム制度」を導入している。「協働タイム制度」とは、社員の「自りつ(自立・自律)」を
目指して社員自らタイムマネジメントを行い、生産性の高い、効率的な新しい働き方を創出・
実践する事を目的としたフレックスタイム制度である。この制度では、労働者が任意にコア
タイムの変更(協働タイム変更制度)やコアタイムを設定しないオープンワーク(在宅勤務)
制度を選択できるようにしている。
協働タイム制度は総労働時間短縮を目指すものであり、テレワーク利用者にも積極的な利
用を促している。実際にテレワーク利用者の63%が協働タイム制度を利用している。
協働タイム制度は、コアタイム以外での中抜けや早出・早帰りを可能にしている。さらに
オープンワーク(在宅勤務)を利用する社員については、必要に応じて中抜けが可能となっ
ている。
協働タイム制度の導入により、通常の終業時間(17:45)より早く業務を終えて帰宅す
る利用者が全社員の65%となり、制度の浸透がうかがえる。テレワーク利用者については、
55%以上が通常の終業時間より早く業務を終えている。
モバイルワークを利用している社員は、直行直帰を効率よく行うことができる。営業先で
のモバイルワークやサテライトオフィスを活用するという働き方を頻繁に行っていることか
ら、早く業務を切り上げることができている。
2017年よりスマートフォンの活用を進めており、テレワーク利用者を含めた841名へ支
給し、モバイルワークやサテライトオフィスを活用した働き方を推奨している。会社宛のメー
ルやスケジュールなどをオフィスに戻ることなく確認できるようになり、モバイルパソコン
を支給されていない社員もスマートフォンの活用により業務時間を短縮できている。
標準労働時間帯
労働時間帯(清算可能時間帯)
所定労働時間(9:00~17:45)
789101112131415161718192021
必ず勤務しなければならない時間帯いつ退社してもよい時間帯
いつ出社しても
よい時間
早出休憩残業計画タイム
(フレキシブルタイム)
計画タイム
(フレキシブルタイム)
協働タイム
(コアタイム)
協働タイム
(コアタイム)
協働タイム制度「すべてはお客様のために」
名称も変更
計画タイム:フレキシブルタイム
協働タイム:コアタイム
ここが
ポイント!
協働タイム変更時間帯
10:30789101112131415161718192021
必ず勤務しなければならない時間帯いつ退社してもよい時間帯いつ出社してもよい時間
早出休憩残業計画タイム
(フレキシブルタイム)
計画タイム
(フレキシブルタイム)
協働タイム
(コアタイム)
協働タイム
(コアタイム)
協働タイム変更制度【コアタイム短縮制度】
短縮
部分
789101112131415161718192021
いつ勤務してもよい時間帯
早出残業計画タイム(コアなしフレキシブルタイム)
オープンワーク(在宅勤務)制度
最低2時間以上勤務
利用条件1)1日最低2時間以上の勤務とし、そのうち7時~20時の間に2時間以上勤務する
2)労働時間が6時間を超える場合は、1時間の休憩を必ず取得する
3)原則として1日7時間45分を超える勤務は禁止とする
オープンワーク(在宅勤務)の利用者が、在宅勤務を「好きな時間に際限なく仕事が出来
る制度」と誤解することがないよう、時間外労働を原則禁止とし、「安易な長時間労働」の
発生を抑制している。加えて、休日での利用は禁止(対象外)となっている。
オープンワーク(在宅勤務)・協働タイム制度などの取組の結果、2017年4月〜6月の第
一四半期について、前年同期比較で所定外労働時間(平均)が31.4%減少した。
テレワークの推進を含めた働き方改革により、業務場所の柔軟な運用、育児や介護のため
に従来十分に就労時間を確保できないでいた人材の活性化、労働生産性の向上を実現してい
る。
■就労による経済的自立、多様な働き方・生き方の選択
【多様な人材の活躍】
高齢者や、障がい者についても、テレワークが利用可能であり、利用上の制限は設けてい
ない。雇用する障がい者の23%(6名:特別身体障害者4名、身体障害者1名、精神障害者
1名)が、テレワークを活用し、健常者と同じ働き方をしており、生産性向上に寄与している。
【育児・介護と仕事の両立】
育児や介護を担う社員については、配偶者の育児休業の有無に関わらず積極的に協働タイ
ム・オープンワークの制度活用を推奨している。
従前から復職者に対する研修を行う等、復職のサポートを行っている。テレワークの利用
希望者についても推奨しており、こうしたサポートを実施することによって、育児休業取得
後の職場復帰率は100%である。
育児中の男性社員は、テレワークを積極的に利用する傾向にあり、対象者(男性社員)への
ヒアリングでは、子供の年齢が小さいほどテレワーク(協働タイム・オープンワーク)利用頻
度は高い傾向にある。テレワークを利用した男性社員へのヒアリングでは、以下のような結果
が得られた。
○実施理由・頻度
・保育園への送迎をするため、毎日利用している。
・妻が子供を保育園に送迎できない時、通院、学童保育の利用がある時など、月に数回利用
している。
・子供の急な発熱などに対処するため年に数回利用している。
・子供の入退院が多い等の理由で不定期に利用している。
○利用者の意識
・妻も働いているので自分(夫)の育児参加は当たり前であり、テレワークを利用すること
で休まないで済むのは助かる。
・テレワーク利用で子供といられる時間が増え、妻も子供も喜んでいる。
・仕事との両立がしやすく、テレワーク制度の利用申請をすることで上司や同僚の理解も変
わった。
・テレワークの利用登録することで後ろめたさが減り、気持ち的に楽になった。
○制度への評価
・テレワークの制度が無いと育児参加できない。
・テレワークの制度が無かったら夫婦どちらかが仕事を辞めなければいけなかった。
【その他】
プリンター設備がない中でのテレワークであっても、コンビニエンスストアに設置された
自社製品の複合機にクラウド経由でプリントアウトを行うことができる仕組みを導入し、オ
フィスで勤務する時と同様に紙媒体を共有できるようにした。これにより、作成した提案書
などを遠隔地で出力し、顧客への提出が可能になった(トライアル実施)。
この結果、テレワーク実施時にプリントアウトのために会社に戻らなくてもすむようにな
り、移動効率が向上し、生産性向上に繋がった。
会社・出先提携コンビニエンスストア
最寄の店舗で、すぐプリント
登録
ネットプリント
センター
■社員の満足度
2016年7月〜12月のオープンワーク実施者へのアンケートの結果、対象者の82.8%が制度
に満足していると回答。また制度のメリットとして、時間の有効活用60.6%、通勤時間の業務
時間への振り替え24.2%、業務への集中18.2%、育児との両立15.2%となっている。
45.7%
37.1%
5.7%
2.9%
8.6%
肯定的回答
82.8%
不満
やや不満
どちらとも言えない
ほぼ満足
満足
満足・ほぼ満足の
肯定的回答82.8%と
高い数値となりました
勤務時間の短縮ができた
より多くの業務を行えた
時間を有効に使うことができた
その他
10%20%30%40%50%60%70%80%90%
22.9%
31.4%
57.1%
82.9%
■その他
自社のテレワークやフレックスタイムの事例をまとめ、顧客を対象としたセミナーや顧客と
のコラボレーション活動を通じて、テレワークの効果を顧客へ発信している。これにより首都
圏地域でのテレワークの普及とワーク・ライフ・バランス向上の推進に貢献している。
他社の模範となる取組に関する事項
■労務管理上の工夫
オープンワーク(在宅勤務)は全社員が利用できる制度であり、限られた時間の中で成果を
出した人を評価する文化へ移行するよう、経営トップ自らが声を上げており、人事評価制度も
成果面の比重を高くしている。
オープンワーク(在宅勤務)の利用者を対象に月6回以上説明会を行っており、この中で、
長時間労働を抑制する観点から、好きなだけ働ける制度ではないといった趣旨を伝えるととも
に、休憩や中抜け(不就労)については本拠地のオフィスと同じように扱うことをきちんと伝
えている。また、パソコンの使用記録をもとに上司が勤怠管理を行うことで正しい就労時間を
管理できている。
■環境整備上の工夫
テレワーク利用者全員に基幹システムへのアクセス権限を付与し、ノートパソコンを貸与し
てテレワークを実践している。
また、コミュニケーション活性化のためにスマートフォンを内線化できるオフィスリンクを
採用し、業務管理ツールのコミュニケーション機能であるWeb会議システムやチャットを組
み合わせるなどの工夫をし、管理者による勤務状態の確認や社員間の相互コミュニケーション
を密に行うことができるようにしている。
テレワークのためのICT環境を上手にかつ安全に活用できるようにするために、Web会
議システムや複数の情報共有ツールを活用した学習やセキュリティに関するガイダンス等が
Web環境にて提供されている。
都内14拠点にサテライトオフィス機能を有するオフィスを整備し、直行直帰での業務スタ
イルをサポートしている。都内14拠点の中の4拠点においては、サテライトオフィス機能に
加えフリーアドレス環境も整備しており、ペーパーレスでの業務を行っている。これによりテ
レワーク、在宅勤務、サテライトオフィスと社員の働く形の選択肢が広くなった。現在、拠点
外の社員が常時5〜6名、1日15名程度がサテライトオフィスを利用しており、移動時間の
圧縮化に寄与している。
■生産性向上の工夫
上記のようなテレワーク環境の整備のほか、従来からの提案書作成支援活動に加え、2016
年2月〜3月の繁忙期にイントラネットを活用してリモートで見積もり作成を支援する活動を
トライアルで実施し、現場の生産性改善に取り組んだ。
上記の施策の実施により2016年2月〜3月の所定外労働時間が前年同期比較で71%と大き
く抑制された。
■その他
働き方変革ワークプレイス(フリーアドレス環境とサテライトオフィス機能を有するオフィ
ス)の構築にあたり、他企業にオフィス環境やネットワーク構築のためのプロジェクトに入っ
ていただいた。
他にユニファイドコミュニケーション(Web会議、メール、チャット、スケジューラー、
プレゼンス管理などの統合型ソフトウェア)の利用活性化に向けても、スケジューラーによる
Web会議の招集などと連携したシステムの活用面について他企業のサポートを得ている。
富士ゼロックス東京株式会社
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