令和元年度第2回取材記事
働き方を考えるきっかけにもなるテレワーク
自律的に働ける社員全員を在宅勤務制度の対象としている住友電気工業(株)。2019年度は、テレワーク・デイズの期間中に在宅勤務制度を推奨し、利用者を大きく増やしました。今年度の取り組みから感じた効果や課題、今後のテレワーク拡大計画などについてうかがいました。
人事部 労政・ダイバーシティ部 ダイバーシティ推進グループ (左から) 大野 真介さん、三屋 ひとみさん
テレワーク・デイズ期間中に在宅勤務制度の利用を促進
今年度、実際に行った取り組み内容をお話しください。
2019年のテレワーク・デイズの期間中(7/16~9/15)、積極的な在宅勤務制度利用を全社へ呼びかけました。特に職場上長に対しては、人事部から月に1回の頻度で個別にメールを送り、上長を中心に期間中に少なくとも2回は利用してほしいと依頼しました。希望する社員が制度を使いやすい風土を作っていくためには、まずは職場上長が利用し、在宅勤務を体感してもらうことが重要と考えたためです。
当社の在宅勤務制度は2018年10月からは育児や介護などの事由がある人に限らず、自律的に働ける社員全員に対象を拡大していましたが、まだまだ社内では「在宅勤務制度は特定の人のための制度」という意識があり、利用要件を満たしていても使いづらい雰囲気が残っているように感じていました。
テレワーク・デイズ期間を経て、社内に変化はありましたか?
テレワーク・デイズ期間中の利用者の6割は、在宅勤務のはじめての利用者でした。実際に利用してもらうことで、在宅勤務制度は特定の人のための制度ではなく、「仕事の見える化」やタイムマネジメントの意識向上に資する制度であるという認識が浸透し始めているように思います。
また、この期間中には、外出・出張時の隙間時間の有効活用と移動時間削減を目的に、社外のサテライトオフィスを試行導入しました。営業部門を中心に100名強が利用し、そのうち6割以上は関東圏での利用でした。社外サテライトオフィスについては、今後の導入について引き続き効果検証を行っているところです。
今年度の取り組み内容は、ほぼ予定どおり行えたと言えるでしょうか?
今年度末までに利用者300人を目標の一つとしていたところ、2019年中に500人を超える社員がすでに利用し、想定以上の利用者数となりました。
テレワーク・デイズ後に、在宅勤務制度利用者とその上長へ行ったアンケートの結果では、「生産性が向上した」と回答した利用者が85%、「部下がテレワークを利用したことによる業務への支障はなかった」と回答した上長が9割以上でした。2019年1月に行った前回のアンケート時より利用に対してポジティブな回答が増え、在宅勤務時のマネジメントにも慣れてきたという印象です。
また、昨年は台風の襲来が何度もあり、在宅勤務は業務継続において有効だと気付いた人が増えました。通常は在宅勤務制度利用者が1日あたり数名程度だった事業所が、大型台風襲来時には利用者が1日あたり数十名へと急増したケースもあります。
在宅勤務制度利用でタイムマネジメントの意識が向上
これまでの取り組みで特に感じる効果がありましたらお聞かせください。
在宅勤務制度利用時には、どんなタイムスケジュールで何の業務を行うのかを計画し、始業時には上長へ報告し、終業時にも実際の業務内容を伝えます。これは、「仕事の見える化」やタイムマネジメントの意識向上につながっていく手ごたえがあります。働き方をいろいろと考えていくきっかけにもなります。
一方、ここまでの取り組みで課題と思われたことは何でしょうか?
在宅勤務制度は、現在は営業・研究開発・コーポレート部門での利用率が高く、これらの部署では利用しやすいようですが、製造現場に近い部署では在宅勤務が可能な社員でも気軽に利用しづらいといった雰囲気があるようです。
在宅勤務の活用によって効率よく業務を遂行できる場合には、積極的に制度を利用してほしいと考えており、利用したい人が利用できる環境をつくるために、より多くの人に一度でも利用してもらう必要があると感じています。
現状の制度内容は変えず、より利用しやすい風土づくりに注力していきたい
来年度以降、どのようにテレワーク利用を拡大していきたいですか?
在宅勤務制度を利用したい人が気兼ねなく利用できる環境にするとともに、在宅勤務を通して「仕事の見える化」や効率よく仕事をする意識の醸成など、生産性を高める施策として利用を促していきたいです。今後も定期的にアンケートを行い、方策を検討していきたいと考えています。
2020年のテレワーク・デイズの実施方針が決定しましたが、この期間は、昨年同様、利用促進を呼びかけていくことになると思います。
本年度1年間の取り組みで、在宅勤務制度が特定の人のためにあるのではなく、誰もが利用できる制度だという認識は深まりつつあります。今後、さらに利用しやすくなるために、在宅勤務の事例の更なる周知を図っていきたいと考えています。現在、社内ホームページ上に事例が点在して掲載されているため、それらを1カ所に集めて多くの社員に閲覧していただけるようにすることなども検討中です。