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三菱商事太陽株式会社 テレワークの導入と生活改善のサポートにより、障がいのある人の就労機会の拡大 に貢献している。定年後の雇用延長を望む社員の割合は100%であるなど、働きやす い環境作りに取り組んでいる。 ■制度の整備状況 2014年に障がいのある社員を対象に在宅勤務制度の運用を開始した。2019年7月より障 がいの有無に関係なく全社 員が利用できる在宅勤務制 度のトライアルを開始し、2020 年4月より正式運用を開始し た。オフィス勤務の社員は、週 1〜2日の在宅勤務が可能で ある。在宅勤務前提に採用し た障がいのある社員は、勤務 日の100%在宅勤務で業務を 遂行している。 会社概要 基本的な事項 組織名 名称:三菱商事太陽株式会社 創立:1983年 組織代表者 役職代表取締役社長 氏名福元邦雄(ふくもとくにお) 業種情報通信業 所在地大分県 総従業員数126人(2020年10月1日時点) テレワークの導入形態終日在宅勤務部分在宅勤務 テレワークの利用者数(過去1年間)46人(2020年8月時点) (図表1社員構成(2020年10月現在)) 三菱商事太陽社員構成(障がい別) 2020年10月1日現在 重度身体 38名 身体 14名 障がい無 45名 精神・発達 27名 知的 2名 身体障がい内訳 身体 52名 全従業員数 126名 内在宅勤務者15名車いす 25名 障がいのある社員が65%在籍しています。 社員の20%が車いすを利用しています。 30 ■経営上の位置付け 中期経営ビジョンにおいて、「anytimeanywherebestperformance」を掲げ、在宅 勤務をはじめとした多様な働き方を推進することを経営トップより社員に発信している。 ■周知・啓発方法 在宅勤務制度の導入にあたって社員向けの説明会を開催した。遠隔地の社員について は自社社員が採用時に出張し、在宅勤務の意義を説明している。 ■人事・労務管理の整備 【労務管理の運用ルール】 Web上で管理できる勤怠管理システムを利用して労務管理を実施している。時間外労 働については事前に上司の承認を得るルールを徹底している。労務管理徹底のため、パソ コンのログを毎日取得しており、勤怠管理システムの出退勤記録とパソコンのログに乖離 がある場合は、総務・管理部より該当社員に対して、自主残業の有無について確認が入る 仕組みとしている。この仕組みにより長時間労働の抑止力が働き、承認のない自主残業が なくなった。 【人事評価面での取組】 在宅勤務社員についてもオフィス勤務社員と同等の評価項目にて評価を実施してい る。コミュニケーション不足が評価に影響しないよう在宅勤務社員についてはオフィス勤務 社員とのバディー制とし、バディーは毎日在宅勤務社員とタブレット越しに顔を合わせなが ら一緒に業務を遂行している。在宅勤務社員のパフォーマンスを熟知するバディーから評 価者に定期的に在宅勤務社員のパフォーマンスがフィードバックされることで、評価者が 常時適切に対象者の能力を把握し評価に繋げることが可能で、業務の進捗については バディーが都度状況確認を行いながら進めているため、就業時間中に適切に作業を進め ていることが把握できるようになっている。業務終了時の夕会も実施する為自主残業等も一 切無い状況である。 さらに、評価者と在宅勤務社員が定期的に目標面談を実施することで、各自のキャリア プラン・業務目標に対するレビューを確実に行うことができる仕組みを構築している。 31 ■情報通信環境の整備 【在宅勤務】 社内ネットワークに接続可能なパソコンを会社より貸与している。 普及率の高いツールを使いビデオ通話や画面共有機能を活用しており、特にチャット (短文通信)機能は対話が苦手な障がいのある社員に有効に機能している。タブレットの ビデオ機能を常時オンにすることで、在宅勤務社員がオフィスの状況を見ながら業務を行 い、必要に応じてオフィス勤務社員にそのまま話しかけることもできるため、隣席にいるよう なコミュニケーションが可能となっている。 (写真1コミュニケーションの様子) ■環境整備上の工夫 労働災害防止、情報漏洩防止等の観点から、在宅勤務社員向けのチェックリストとして、 在宅就労の環境調査票、在宅就労者パソコン利用ガイドライン、VDT作業チェックリスト、災 害発生時の避難についてのヒアリングシート、在宅就労者に関する情報セキュリティチェック シートを整備している。 在宅勤務を行う障がいのある社員に対して、個々の特性に合わせた環境整備も実施して おり、採用時には就労支援担当部署の社員(精神保健福祉士・ジョブコーチ等)が対象者の 自宅を訪問し、在宅での安定就労に向け本人の心身状況及び周辺環境が整っているか、阻 害要因の有無を確認している。 遠隔居住地における社会資源(相談支援事業所、障がい者就業・生活支援センター等) と会社が常時連携し社員に対する現地サポート体制を整備することで、生活面・就業面での 困りごとについて現地で即対応できる環境作りを行っている。また、身体障がいのある社員を 中心に居住地の理学療法士による作業姿勢等のチェックも定期的に実施し、業務由来の身 体上の不調が発生していないか確認を行う仕組みを整えた。 社内イベントや懇親会はオンラインで参加可能とし、業務外でもオフィス勤務者とのコミュ ニケーションの機会を確保している。 32 ■健康で豊かな生活のための時間の確保 【労働時間の工夫】 在宅勤務の障がいのある社員については個々の事情や利用サービスの時間などを考 慮して、労働時間の設定・変更を個別かつ柔軟に行える仕組みとした。また、体調の安定 を優先させるため2014年以来、年度毎の時間外労働は10時間未満としている。 さらに、定期的なラジオ体操、理学療法士による体操指導も実施しており、在宅勤務社 員の8割が参加している。このような運営により、障がいのある社員が各自に合った労働時 間で働くことで体調を維持しながら安定的に働くことが出来ている。また、障がいの状況や 生活が変化しても退職せず長期的に勤務を継続することが出来るようになった。 ※障がいのある在宅勤務社員の内、障がいが理由で離職した社員は0%である。 このほか、就労支援担当部署の定期面談により労働時間についてのヒアリングを実施 し、面談により疲労の蓄積等が認められた場合は、労働時間の一時短縮や休暇取得を推 進している。また、テレワークによるコミュニケーション不足を補うべく在宅勤務社員の増加 とともに就労支援担当部署との面談を強化しており、2019年度第1四半期46件であった 面談件数は、2020年度第1四半期は218件にのぼった。面談の効果により、在宅由来のス トレスを訴える社員はなく、労働時間内に適切に働くことが出来ているか、業務に集中する ための阻害要因がないか等ヒアリングを行うことで現場と面談の両面で労働状況の確認 を行っている。 (写真2在宅勤務社員のテレワークの様子) ワーク・ライフ・バランスに関する事項 33 ■就労による経済的自立、多様な働き方・生き方の選択 【採用応募時の選択】 2014年より障がいのある人を対象に在宅勤務制度を開始していたが、当時はデータ入 力業務における雇用であった。2019年にはシステム開発業務・総務部門においても障が いのある在宅勤務社員を採用した。在宅勤務可能な職種を拡大することで障がいのある 人々の多様な特性に合った業務を割り当てることができるようになり、より一層障がいのあ る人の就労機会の拡大を目指すことが可能となった。 また、自社の基幹業務であるシステム開発に従事する技術者養成の為、(株)エヌ・ティ・ ティ・データ・イントラマートと連携して2018年夏に「在宅SE養成コース」を実施した。その結 果、全国各地に居住する在宅勤務希望の障がいのある人から多数の応募があったことか ら、一定の要件を満たした人に対して会社負担でeラーニング教材を提供し、このeラーニン グを受講して実務課題をクリアした29名 中13名を自社にて採用した。従来は自律 力や対人マナーがあることなどを採用の 前提条件としていたが、本ケースに於い てはそれらの条件に課題ある場合、生活 改善のサポートにより課題解決を図ること とした。技術面のスキル重視で選考したこ とで、SEとしての高い能力や就労意欲が あるにも関わらず、就労に難航していた 人材を採用することが出来たと共に、自社 の慢性的なSE不足を解消することが出 来た。 〈在宅勤務社員のコメント〉 ●2019年10月1日入社開発部ITソリューション第一チーム在籍H.Y職員 3年前に左片麻痺になり、手は回復したのですが、足と体幹に障がいが残りました。健常者と 同じ仕事に就くことが困難になり、今年障がい者手帳の申請をしました。障がい者の仕事を探 すと、単純作業だったり、最低賃金だったり、条件が合わず、スキルも活かせない仕事がほとん どでした。御社の求人は、私にすればスキルが活かされ、就労条件もマッチしていて、かなり理 想の条件で働けると思い応募しました。 ●2020年2月1日入社開発部ITソリューション第二チーム在籍K.N職員 就職困難者になった50代の者にとって、就労可能状態をアピールすることは難しく、就職は 本当に困難で、就労支援事務所で訓練しながらチャンスを待つしかありませんでした。この度、 会社のWebアプリ技術者養成に合格し、障がいへの理解やサポート体制などに積極的な取り 組みをされている職場において、遠方からにも関わらずテレワーク(在宅勤務)によって好きな 分野の仕事をさせていただけるようになったことは本当に運がよかったと思います。通勤時間 や職場のストレスから解放される、このようなテレワーク(在宅勤務)による働き方をより発展 させて頂きたいと願っています。 (写真3在宅SE養成コースに関するメディア掲載 出典:株式会社エヌ・ティ・ティ・データ・イントラマート社 季刊誌「IM-Press」) 34 【多様な人材の活躍】 身体の障がいのある社員は健常者より10年早く機能低下すると言われており、社員の 高齢化対応が課題であった。実際50歳を過ぎ、筋力低下に悩む社員や障がいゆえに長 期療養に至る社員も少なくない。しかし、在宅勤務制度の導入及び柔軟な労働時間の設 定により、障がいのある社員の労働寿命を延ばすことが可能となった。定年後雇用延長を 望む社員の割合は100%である。 また、2018年以前、在宅勤務前提で雇用された障がいのある社員は全員が身体障が いだったが、在宅勤務可能な職種が増えたことなどにより、2020年8月現在、障がいのある 在宅勤務社員の7割が精神の障がいのある社員となった。 【育児・介護と仕事の両立】 育児の必要がある社員の全員が在宅勤務制度を積極的に活用している。フレックス制 度との併用や配偶者との役割分担により、従来時間の制約があった業務(会議参加等) についても柔軟に対応することが可能となった。 ■社員の満足度 2019年11月に実施した在宅勤務に係る社内アンケートで全員が在宅勤務制度の導入に 満足していると回答している。 〈在宅勤務社員のコメント〉 ●2019年8月1日入社開発部ITソリューション第一チーム在籍H.M職員 持病で通勤やオフィス勤務が難しい私も在宅勤務であればシステムエンジニアとして安定 して勤務できています。業務の流れや機器の導入といった在宅勤務者に対する投資も積極的 に行われており、日々働きやすくなっていることを感じています。 業務では出社・在宅勤務問わず開発メンバー同士でコミュニケーションを取り、物理的な距離 はあっても連帯感を持ってシステム開発できることが大きなモチベーションになっています。 ●2019年12月1日入社開発部ITソリューション第二チーム在籍Y.I職員 在宅勤務という選択肢をいただけたことに大変感謝しています。感覚過敏の特性から、通勤 や職場にいることが大変でした。在宅勤務として働きはじめて、集中して仕事に全力で取り組 めるようになりました。おかげさまで毎日充実した時間が過ごせています。 三菱商事太陽株式会社 35
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