ダイドードリンコ株式会社
全社的にテレワークをベースとした「新たな働き方」へ移行しており、内務職・営業職そ
れぞれの社員が、対面とオンラインを併用した自律的かつ柔軟な働き方を実現している。
60歳以上の高齢者、障がい者、育児・介護を担う社員もテレワークを活用して活躍してい
る。働きすぎの防止や社員の健康意識を高めるための取組も積極的に実施している。
■制度の整備状況
2020年6月より「新たな働き方」を進める中で、社員からは「自宅の光熱費が増えた」や営
業担当者からは「直行直帰をする営業途中における空き時間で費用がかさむ」といった声
が寄せられた。そこで、2020年7月21日より「テレワーク勤務規程」の運用を開始し、テレワー
ク対象者(全員)に「テレワーク手当」を支給している。
〇「テレワーク手当」概要
・目的:「新たな働き方」の推進による生産性向上とワーク・ライフ・シナジーの実現
・対象:ダイドードリンコ(株)全社員
(正社員、契約社員、パート社員、再雇用社員計約800名)
・支給額:月3千円※ただし月15日以上就業した社員に限る
(図表1「テレワーク手当」概要)
会社概要
基本的な事項
組織名
名称:ダイドードリンコ株式会社
創立:1975年
組織代表者
役職代表取締役社長
氏名中島孝徳(なかしまたかのり)
業種製造業
所在地大阪府
総従業員数758人(2021年8月時点)
テレワークの導入形態
終日在宅勤務部分在宅勤務
モバイル勤務サテライトオフィス勤務
テレワークの利用者数(過去1年間)758人(2021年8月時点)
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■経営上の位置付け
2020年6月1日より、生産性向上とワーク・ラ
イフ・シナジーの実現を目指して、テレワークを
ベースとした「新たな働き方」へ全社的に移行
した。新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い
発出された緊急事態宣言を契機に実施した在
宅勤務時の経験と課題を踏まえ、全社員がテレ
ワークをベースとして自律的に業務を遂行しつ
つ、内務職においては週3日まで在宅勤務可能
とした。また、一定の日数はオフィスへ出社し、
直接的なコミュニケーションを行うことにより、組
織の活性化を図る仕組みとしている。
一方、営業職においては、直行直帰やフレックスタイムを活用した柔軟な勤務体制として
いる。従来からの対面での商談による取引先との良好な関係の構築に加えて、新たな営業
スタイルとして、電話やWeb会議を活用したオンラインでの商談を推進し、リアルとデジタルを
融合させた効率的な営業活動により、生産性の飛躍的向上を目指している。
〇「新たな働き方」概要
・目的:生産性の向上及びワーク・ライフ・シナジーの実現
・対象:ダイドードリンコ(株)全社員
・実施内容:【内務職(本社など)】週3日までの在宅勤務を可能とする自律的業務推進
【営業職】直行直帰、フレックスタイムを活用したモバイルワークを徹底し、
インサイドセールスを推進
(図表2「新たな働き方」概要)
■周知・啓発方法
新たな働き方に関するニュースリリースの
発信に加え、自社のホームページ上にてテレ
ワーク制度やテレワークを活用する社員の声
を積極的に紹介している。
(画像1オフィスでの打合せ風景)
(画像2自社サイトでの情報発信)
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■人事・労務管理の整備
【労務管理の運用ルール】
PCのログオン・ログオフ時刻と、Web打刻システムの打刻の差異をチェックし、長時間労
働や業務の怠りがないよう管理している。基本的には性善説に立って管理することとし、フ
レックスタイム制度も導入しているため、社員一人ひとりが自律的に労働時間を自己管理
することを推奨している。
【人事評価面での取組】
テレワークの手引きや、テレワーク導入案内の発信時に、「管理職が心がけるべきこと」
のメッセージ発信・指導を行った。非管理職の「成果の見せる化」など、テレワークでも正当
な評価ができる・されるよう指針を出している。
また、部署単位で、テレワーク実施の有無にかかわらず業務計画を行い、達成や取組
程度に応じて評価されるように実行している。
■情報通信環境の整備
【在宅勤務・モバイルワーク】
全社員に社内ネットワークにアクセスできるWi-Fiルータ・Web会議用のカメラ内蔵型の
PC・業務用携帯を貸与している。また2020年7月より、月15日以上就業した社員を対象に、
毎月3千円の「テレワーク手当」を支給する制度を導入し、在宅勤務に伴う水道光熱費や
モバイルワークにおけるカフェ代等の補助を行っている。
【サテライトオフィス勤務】
一部営業職においてカラオケ施設など
を利用できるようにした。また、社外のサテ
ライトオフィスの利用や社内のコワーキング
スペース整備により、テレワークの利便性
を向上させた。
(画像3社内個人集中ブース)
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■健康で豊かな生活のための時間の確保
【労働時間の工夫】
2020年3月導入のフレックスタイム制度がより柔軟に活用できるよう、2020年6月からは
週3日までの在宅勤務を全社員が利用可能とした。営業職においては、自宅を拠点に直行
直帰ができる体制へ変更した。新たな働き方をスタートしたことで、社員の満足度向上及
び生産性向上に繋がっている。
また、在宅勤務利用者は、2019年度2%(一部限定)から2020年度100%(全員適用)
へと、柔軟な働き方が進んでいる。
【時間外・休日労働の工夫】
36協定での定めとは別に1か月の時間外労働の上限を40時間とする社内ルールを定
め、労働時間を管理することで長時間労働の抑制を図っている。また、20時を超えて就
業する必要がある場合は、上司の許可と人事部門への報告が必要なルールとすることで、
「働きすぎ」を防止している。
全社員にテレワークを拡大した2020年6月以降のデータで比較すると、時間外労働が
前年同一時期に比べ約12%減少した。また、プライベートの時間が増え、充実した生活が
送れていることで、満足度の向上にも繋がっている。
【健康促進の取組】
テレワーク(特に在宅勤務)による不調を予防し、健康で豊かな生活のために、ストレッ
チ休憩を推奨しており、お薦め動画を紹介・配信した。加えて、健康セミナーの実施や、コ
コロとカラダの健康管理アプリの導入で歩き習慣の促進も呼びかけた。
また、メンタルヘルス相談窓口の利用促進や、保健師の定期訪問時の健康相談会も実
施しており、健康施策として、健康イベント(ウォ-キングラリー)を実施することで、コロナ太
り防止や社員の健康維持に取り組んでいる。
ワーク・ライフ・バランスに関する事項
(画像4健康促進の取組)
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■就労による経済的自立、多様な働き方・生き方の選択
【多様な人材の活躍】
週3日までの在宅勤務は全社員が利用可能となっており、障がい者についてもオフィス
出社時と変わらず、在宅勤務で仕事をしている。現時点で、60歳以上の高齢者(28名)、
障がい者(13名)の全員が新しい働き方で活躍している。
【育児・介護と仕事の両立】
未就学児や介護が必要な家族がいる者については、週3日までのテレワークでは不十
分な場合、申請制で完全在宅勤務を行えるようにしている。
週3日までの在宅勤務は全社員が利用可能となっているため、男女問わず育児・介護の
ための柔軟なテレワーク活用ができている。そのうち、育児・介護を理由とする完全在宅勤
務に関しては、トライアル実施期を含め2016年1名→2019年4名→2021年7名と、制度利
用者の拡大も実現している。
【多様な生き方の選択】
育児・介護以外の理由でも柔軟なテレワーク活用ができている。通勤がなくなったことで
時間に余裕ができ、家族と共に過ごす時間を増やす社員や、自身の病気治療のための通
院、スキルアップのための学習にあてる社員もいる。また、配偶者の異動に伴い転居が余
儀なくされ、通勤が困難となる場合も、会社が認める者については、申請制で完全在宅勤
務を行えるようにしている。
■社員の満足度
2020年7月に実施したエンゲージメントサーベイで、全社員にテレワークを拡大する新たな
働き方について4割が「メリットがある」と回答し、また4割が「会社への信用度が上がった」と
回答した。
(画像5在宅勤務中の様子)
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【ペーパーレス化の取組み】
ペーパーレス化の一環で、契約書や社内人事書類関係を電子化する仕組みを導入
した。これにより、社内の人事書類に関しては、人事労務担当者と従業員間の業務工程
で従来の1/5程度までに減少した。紙の量は、次年度の扶養控除申告書もあわせて、約
12,000枚削減することができた。書類の配布・回収業務が一部の原本書類のみとなった
ため、大幅なペーパーレス化を実現することができた。同時に、従業員は在宅勤務・モバイ
ルワークを継続できており、人事労務担当者がオフィスへ出社せずとも、従業員からの問
い合わせに対応できるようになった。
【BGMの有効活用】
生産性向上・健康経営を目的に、オフィスに有線BGMを導入している。業務や時間帯
に応じたBGMを流すことで、雑音を知覚しにくくなることによる社員の集中力の向上やスト
レス軽減を図っている。リラックス効果や、メリハリをつけて生産性高く働ける効果を感じて
いたが、テレワーク利用者が増え、オフィス出社者が
減っている現在では、オフィスが静かになりすぎないと
いう点でも働きやすさという効果を感じられている。
また、オフィス内の映像配信を行うことで、テレワー
ク実施者の孤独感解消にも取り組んでいる。
【その他の取組】
全社員にテレワークを拡大した2020年6月以降のデータで比較すると、時間外労働が
前年同一時期に比べ約12%減少した。
2020年7月より通勤手当の支給を実費精算に移行し
たことで、経費削減にも繋がっている。
電気代や印刷代等のオフィスコストは、コロナ禍で
テレワークを実施した4~6月と前年同一期間を比較
すると約23%減少した。
一部の拠点ではフリーアドレス制を導入し、作業
ブースや個人ロッカーも備え、働き方に応じた生産性
向上に取り組んでおり、この動きは他拠点にも今後展
開予定である。
ダイドードリンコ株式会社
生産性向上の取組
(画像6社内BGMの活用)
(画像7個人ロッカー)
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