リモート会議って伝わりにくい?
暑くて長かった夏もようやく終わり、短い秋を迎えましたが、皆さんいかがおすごしですか。
東京テレワーク推進センター相談員の川田です。
ここ東京テレワーク推進センターには、「今夏の猛暑中、テレワークのおかげで通勤しなくてすんで助かりました」という声が多かった一方で、「テレワーク中のリモート会議は便利だが意思疎通が・・・」という相談もあります。今回はこの件について考えてみたいと思います。
少し学術的になりますが、交流分析という研究で「時間の構造化」という考え方があります。人との交流が少なくなると、精神的・肉体的に問題が起こるため、交流そのものがポジティブなものでもネガティブなものでも、どうにかして交流をして満たそうとします。交流の密度を規定し、どのレベルで多くの時間を過ごしているのかを考えるのが交流分析の「時間の構造化」です。
この「時間の構造化」を参考に、リモート会議によるコミュニケーションの時間を以下のように分類することができると考えます。この分類の考え方では、レベルの数字が大きくなるほど密なコミュニケーションになります。
Level | 状態 |
---|---|
1 | 心ここにあらず |
2 | 挨拶 |
3 | 雑談 |
4 | 本題 |
5 | いらいら… |
6 | チーム一丸!! |
リモート会議は伝わりにくい、とのご相談についてこの分類に沿って振り返ってみると、その原因が見えてきます。
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Level1 心ここにあらず
リモート会議から、頭が脱線した状態(=聞いているふりをして聞いていない)のこと。
特に、会議がつまらない、自分にあまり関係がない時ほど陥りやすく、例えば、自宅で会議に参加していると普段は気にならない部屋の隅の埃が目に留まり掃除したい衝動に駆られるなど、会議の音声はBGM状態。この時に意見を求められると、しどろもどろになり、聞いていなかったことがすぐにばれてしまいます。 -
Level2 挨拶
形式に沿ったコミュニケーションのこと。
リモート会議では、日頃の挨拶に加え、「音声は届いていますでしょうか?」と相手の通信状態を確認することも習慣になりました。コロナ禍でのリモート会議の小さなトラブルを皆で経験したからこそ、今のスムーズなリモート会議の進行があります。 -
Level3 雑談
テレワークになって極端に減ったとされる雑談。
お互いに気楽な話題で話すことを楽しむ時間で、特に成果が得られるものではなく、コロナ禍前は単なる無駄な時間、と位置づけられていたかもしれません。しかしながらテレワークの普及に伴い、雑談は大きく地位が向上しました。たわいもない会話の中から、ひらめきにつながることもあり、わざわざ雑談の時間を設ける企業もあります。私たち相談員も日々の電話での相談者の方との会話で、ちょっとした雑談をきっかけに相談の本質にスムーズに入っていけた経験が何度もあり、この“雑談”のありがたみを実感しています。 -
Level4 本題
目的に向かって生産的に心を動かす時間。
リモートであっても対面の打合せのように、参加者全員が生産的に心を動かしていれば、建設的に課題解決や目標達成に向かうことができます。
このレベルになったときに、リモートで伝わりにくいと感じるのは、生産的に心を動かしている本題(Level4)のふりをして、実は心ここにあらず(Level1)の人が多いからではないでしょうか。私自身、この部分は振り返れば反省するところが多くあります。 -
Level5 いらいら‥‥
同じ主張を繰り返され、嫌な感情が残る時間。
リモートでは伝わりにくいと感じるせいなのか、自分の主張に対する承認を得られたと感じるまで、同じ話を繰り返されることがあり、この場合はお互いにとって嫌な感情の時間を過ごすことになります。常に会話が非生産的になっていないか、客観的に振り返りながら、この時間を早く脱出することが必要です。 -
Level6 チーム一丸‼
チームで結集し、力を合わせている時間。
親交をあたためること、チームの一体感の熱量を伝えることは、リアルに会って伝えること以上のものを見つけられておらず、リアルに会うことの大切さは、なくなるものではありません。リアルに会うことの大切さを踏まえ、毎日会わなくとも、ここぞというときにはリアルでの親交を深めておくことで、テレワークでのコミュニケーションで、感情や熱量がより伝わりやすくなると思います。
企業においてコミュニケーションが課題に上がるのは、コミュニケーションが生産性に直結するからです。リモート会議であっても、生産的を意識し、チームワークを高めていく心がけひとつで、コミュニケーションは変わります。コミュニケーションの時間の使い方を見直すことは、日頃の業務の中で負担にならずに取り組める方法の1つです。リモート会議をよりよく進めるために、コミュニケーションを活性化するための考え方のひとつとして、このお話が少しでも参考になれば幸いです。
(参考)
上記の6つの分類は交流分析の1つです。働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」(厚生労働省)にも交流分析について説明がありますので、ご興味のある方はぜひこちらもご参照ください。
こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト
https://kokoro.mhlw.go.jp/
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執筆者
一般社団法人テレワーク協会 客員研究員 川田理華子(かわだ りかこ)
(社会保険労務士、ソフトウェア開発技術者<現 応用情報技術者>、交流分析士1級)