テレワークの導入方法

テレワークの導入プロセス

テレワークを導入するためには、必要なプロセスがあります。ここでは、テレワーク導入のプロセスおよび推進体制をどのようにすればよいか説明します。

(1)テレワークの導入目的

下図は総務省の「平成30年通信利用動向調査」からの資料です。テレワークの導入目的は、1位が定型的業務の生産性の向上、2位が勤務者の移動時間の短縮、3位が通勤困難者への対応、4位が勤務者のゆとりと健康生活、5位が人材の雇用確保・流出防止となっています。

テレワークの導入目的(複数回答)

出典:総務省「平成29年通信利用動向調査」2019年5月

導入目的設定にあたって重要なのは、目的がその企業の経営方針と密接にリンクしていることです。「テレワークは福利厚生の一環である」という認識の方が多いようですが、実は多くの企業では「働き方改革による生産性の向上」を目的とし、戦略的に導入しています。テレワークの導入目的をトップ自らが従業員に明確にし、理解させることが望まれます。テレワーク導入に成功している企業では、トップが強い意思で社内を説得しています。人事部門が提案し、導入したとしてもトップダウンが非常に重要です。早い段階からテレワーク導入の目的を共有し、全社で関心と協力を得られるようにすることが成功の鍵となります。

(2)テレワーク導入プロセスと推進体制

テレワーク導入の大まかなプロセスは下図の通りです。テレワーク推進にあたっては、プロジェクトチームの結成が望まれます。参加部門は、経営企画部門、総務・人事部門、情報システム部門、導入対象部門などです。

ここで重要なのは、導入対象部門のトップにリーダーになってもらうことです。いくら人事部門が導入の重要性を訴求しても、現場部門はなかなか動かないことがあります。現場部門のトップ自らがリーダーシップを発揮するとテレワークはスムーズに導入できます。

テレワーク導入プロセス

(3)業務分析

プロジェクトチームが中心となって、現状の業務分析をします。業務分析のチェックポイントは、次の通りです。

  1. 業務時間:業務にかかる時間がどれくらいか
  2. 使用文書:どのような書類を利用しているか、紙か電子か、電子化の必要な文書はどれくらいか
  3. システム:テレワークでも実施可能なシステムが揃っているか、セキュリティは担保されているか
  4. 個人情報:業務上取り扱う個人情報などはあるか
  5. コミュニケーション:業務は何人で行うか、やりとりの頻度はどのくらいか、Web会議システムで対応可能か

以上の分析をした上で、現状の業務を以下のように分類します。

  1. 現状でテレワーク可能な業務
    現状の働き方をテレワークでも支障なく実施できる業務。
  2. 対策実施によりテレワーク可能となる業務
    文書の電子化やコミュニケーション環境の電子化(Web会議の導入など)、セキュリティ対策の実施などによってテレワークが可能となる業務。
  3. 実施困難な業務
    機械的な操作を必要とする業務、人と対面することが必要な業務など。ただし、このような業務であっても報告書を1日まとめて書くなどの対応により、テレワークできる場合もある。

(4)対象者の決定

導入に向けては図2に示したように、具体的な推進策が必要となります。まず、対象者の決定です。多くの企業では、育児・介護を担う従業員をまず導入の対象とします。効果が具体的で分かりやすく、従業員の理解も得やすいからです。

当初はそれでも構いませんが、育児・介護を担う従業員も自分たちだけ特別扱いされていると、肩身のせまい思いをして、制度を利用しづらいというデメリットがあります。また、その他の従業員が不公平感を抱くこともあるので、できるだけ対象者は広げることが望ましいでしょう。

職階によって対象者を限定する場合もあります。入社2年目までの社員は対象外とするなどです。自立して仕事ができない社員には在宅勤務は困難という理由からです。

(5)テレワークの形態

どのような形態のテレワークを導入するのかも決定しなければなりません。在宅勤務、モバイル勤務、サテライトオフィス勤務のどの働き方を導入するのか。また、在宅勤務でも部分在宅にするのか終日在宅勤務にするのか、その両方か。在宅勤務の頻度はどうするのか、週に1日程度にするのか、3日以上も可能とするのか、などです。在宅勤務制度というと、多くの人が毎日在宅で仕事をすると誤解しがちですが、日本の企業の場合は、ほとんどが週に1日か2日の在宅勤務です。

モバイル勤務の場合も直行・直帰を認めるのか、その場合部分在宅勤務も可能とするのか。サテライトオフィス勤務も他社と共有型のサテライトオフィスにするのか、自社専用にするのか、など決めるべき項目は多岐にわたります。

(6)労務管理制度の見直し

労務管理制度についても必要に応じて見直すことが必要でしょう。ほとんどの企業は、トライアル時点では労務管理制度を特に変えていません。週に1日とか2日であれば、外出や出張と変わりないので、特に支障がないからです。

ただし、始業・終業のルールはトライアル時にも必要です。始業・終業時にはメールや電話で上司に伝えるなど具体的に決める必要があります。本格導入の時には労務管理制度も見直すことが望まれます。

よく、在宅勤務者の評価をどうすれば良いかという質問を受けることがあります。これも週に1日とか2日であれば、特に変えなくても良いでしょう。ただし、テレワークと関係なく、評価制度も実績・業績をベースとした制度に変えていく方が、働き方改革の方向性には合っていると考えられます。

(7)社内制度・ルールの整備

社内制度やルールについても検討が必要です。まず、どのようなルールでテレワークの利用者登録をするのか、上司や人事部門が承認するのかなどです。さらに、日常の利用申請もどのようにするのか、1週間前までに上司に申請するのか、前日までで良いのか、などです。

テレワーク時のコスト負担についても取り決めが必要です。よく中小企業の経営者の方から、在宅勤務者は給与を下げても良いのではないかという相談があります。給与制度は業務内容や所定労働時間といった労働条件に変更がない限り、労働者への不利益変更はできないと考えるべきです。

自宅でテレワークを実施する場合に必要な通信費や光熱費、ICT機器などの費用負担については、あらかじめ十分に話し合い、就業規則に定めておくことが望まれます。多くの企業ではインターネット環境などはすでにほとんどの家庭で導入しており、追加負担も発生しないため、補助はしていません。

音声通話については、携帯電話を会社支給したり、個人のスマートフォンの請求を私的利用と会社利用に分けて請求するシステムを導入したりする場合があります。

ICT機器については、会社支給のものを利用したり、BYOD(Bring Your Own Device)で個人のPCをリモートアクセスで利用したりする場合もあります。

光熱費については、企業によって若干の補助をする場合もありますが、多くの企業では自己負担としています。ただし、在宅勤務の日数が多い場合には会社からの補助を検討することが望まれます。

通勤費については、テレワークの頻度によって検討すべきです。週に3日以上在宅勤務する場合は、定期代の支給ではなく、都度精算した方が割安となる場合があるからです。

(8)システムの準備(セキュリティ)

テレワークはセキュリティの管理が難しいという人が多いです。しかし、リモートデスクトップ方式や仮想デスクトップ方式(Virtual Desktop Infrastructure)、クラウドサービスなどを利用すれば、社外であってもセキュリティを確保した上で業務遂行することは可能です。

また、社外にいるとコミュニケーションがとりづらいという人も多いですが、Web会議システムやチャット、メールなどのICTを効果的に利用すれば、社内にいるのとさほど変わらないコミュニケーションをとることも可能です。

(9)文書の電子化

テレワークを実施する上では、文書の電子化は必要不可欠です。既存の紙の文書をどのようにするかが課題となります。しかし、すべての既存の文書を電子化するには膨大な費用がかかるでしょう。

どのような文書を電子化し、どのような文書は紙のままにするかを峻別することが必要となります。頻繁に参照する必要のある契約書などは電子化した方が、オフィスで仕事をする上でも効果的です。

(10) 執務環境の整備

執務環境の整備については、今後増加するサードワークプレイスと呼ばれるコワーキングスペースやシェアオフィスをどのように活用するかも検討することが望まれます。

(11)教育・研修(意識改革)

テレワークによる効果を高めるためには、導入時の教育・研修が不可欠です。教育には、「社内の認識の共有、意識改革を図るための啓発」と「円滑に業務を実施するためのガイダンス」の2つの目的があります。

なぜテレワークを実施するのか、その目的と必要性をテレワークの対象者だけでなく、従業員全員が理解することが必要です。そして、組織全体でテレワークを有効活用して、業務の生産性を上げることが望まれます。

(12)試行導入

1. 定量評価項目
  • 顧客対応:顧客対応回数、顧客対応時間、顧客訪問回数、顧客訪問時間
  • 残業時間:所定外労働時間をテレワーク対象者とそれ以外の社員で比較
  • 事務効率:伝票等の処理件数、企画書等の作成件数、企画書等の作成時間
  • オフィスコスト:オフィス面積、賃借料、コピー・プリント費用
  • 移動コスト:移動時間、移動コスト
  • 情報通信コスト:情報システム保守費用、通信費用
  • 人材確保:入社応募者の数や質、離職者数
  • オフィス改修コスト
2. 定性評価項目
  • 顧客満足度
  • 従業員満足度
  • コミュニケーションの頻度・質
  • 情報セキュリティ意識の徹底度
  • 業務の自律性
  • 働き方の質:仕事への満足度、通勤疲労度、働き方への満足度
  • 生活の質:家族との団らん、趣味・自己啓発の充実度、育児・介護のしやすさ

これらの項目を総合的に評価して本格導入の拡大範囲を決めることが重要です。

以上、テレワーク導入プロセスについて記載してきましたが、必ずしもすべてが揃ってからでないとテレワークを導入できないわけではありません。いざテレワークを試行導入してみると、「問題になるのでは」と懸念していたことが案外大したことでないことが分かります。「案ずるより産むがやすし」で、まずはやってみることが望まれます。