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群馬県高崎市

【取材日:平成30年8月6日】

子育て世代

地元雇用・地元ワーカー

テレワーク紹介を通じて「子育て期ママ」を応援

「子育てと両立できる働き方」をサポートするテレワークセンター『タカサキチ』の看板

JR高崎駅から10分ほど歩いた住宅街の一角に、「子育てと両立できる働き方」をサポートするテレワークセンター『タカサキチ』があります。子育てサロンも兼ねるこの施設を運営するのは、一般社団法人コトハバ (平成26年度補正予算地域実証事業時の名称「ママプロぐんま」から、平成28年に改称)。「子と母と場づくりを」をコンセプトに、子育て世帯の母親へのテレワーク紹介を始めとしたさまざまな子育て応援事業を行っています。
今回はこのタカサキチを訪問し、コトハバ代表理事の都丸一昭氏、そしてタカサキチの一室に入居しながらテレワークも取り入れている株式会社CRANE の代表取締役・安司(あんじ)寛太氏にインタビュー。テレワーク導入のメリット・デメリット、コミュニケーションの注意点などについて、豊富な運用経験に基づいたお話を伺いました。

 

目次

1.働きたい子育てママに、さまざまな仕事を紹介

2.「ふるテレ」実証事業を通じて、悩み相談のコンシェルジュサービスを構築

3.手厚いサポートでテレワークのデメリットをカバー

4.テレワーク活用のポイントは「業務外コミュニケーション」

5.高崎市を、子育ても復職もできる街にしたい

6.本事例についてのお問合せ先

1. 働きたい子育てママに、さまざまな仕事を紹介

インタビューに応じていただいたコトハバ代表理事 都丸一昭さん
▲コトハバ代表理事 都丸一昭さん

まずは、テレワークに関するコトハバの事業についてお聞かせください。

都丸氏:テレワークに関する業務としては、クライアントに発注いただいた仕事を、コトハバに登録しているテレワーカーのママさん達に紹介しています。
仕事内容は、ライティングやオウンドメディア運営、コーディングやWebデザインなど多岐にわたります。最近はデジタルマーケティング領域の仕事が増えてきましたね。
私たちは以前から医療業界や女性活躍関連の活動をしてきたので、その関係で病院や大学、財団法人などからの受注が多くなっています。

テレワーカーは、どんなキャリアの方が多いですか?

都丸氏:美術系の大学を卒業したからデザインの仕事をしたいという人もいれば、未経験ながらライティングに挑戦したいという人もいてさまざまですが、『子育てをしていて、かつ働くことに強いモチベーションがある』という点は共通です。

大きな窓から光が入る、明るい雰囲気のデスク。
▲タカサキチ内のコワーキングスペース

都丸氏:登録している方は、Webサイトからの問い合わせや別のテレワーカーからの紹介がほとんどで、今は30人ほどに仕事を受けていただいています。
自宅で作業する方も多いですし、タカサキチのコワーキングスペースで作業する方もいらっしゃいますね。

2.「ふるテレ」実証事業を通じて、悩み相談のコンシェルジュサービスを構築

安心して子育てに取り組める子育て支援サービス

仕事紹介の事業は、ふるさとテレワーク実証事業への参加をきっかけに始めたのですか?

都丸氏:実は参加以前から、20人ほどの子育て期のママさんテレワーカーに対して仕事を紹介していました。
当時からの課題として、高崎市では県外から来た人が定住せず流出してしまう状況がありました。外からきた女性が安心して子育て期を過ごし、復職できる地域でないと移住者を増やすのは難しい
 
そんな問題意識を持っていた折に、株式会社テレワークマネジメントの田澤由利さんとお話しする機会があって『ふるさとテレワーク』を知りました。制度を活用すれば子育て支援を強化できると考え、高崎市や他企業と合同でコンソーシアムを立ち上げたという経緯です。

「ふるチャットカフェ」の概要
▲「ふるチャットカフェ」概要

都丸氏:子育て期の悩みの1つとして、復職や介護、家族間コミュニケーションなどいろいろな問題に対応する窓口が分散していることがあります。

そこで実証事業では、子育て期の悩みをワンストップで受け付けるWebコンシェルジュサービス(ふるチャットカフェ )を作りました。このサービスを通じて各人の問題に合った地元の専門家に相談することができます。専門家の紹介動画も12本ほど公開したところ、特に高崎市のことをよく知らないママさんに好評でした。

3. 手厚いサポートでテレワークのデメリットをカバー

テレワークで働くメリットはどこにあるとお考えですか?

都丸氏:クライアントにはない専門スキルを身につけているからこそクライアントとテレワーカーが互いに良い関係を築ける。それがテレワークの本質だと思います。結果としてライフイベントや気分に応じて働く場所を選べるのは、特に子育てをしているママさんには大きなメリットです。

デメリットはいかがでしょうか?

都丸氏:自律型人材でないと管理コストがかかってしまうことです。
会社に所属せずテレワークで働く人は、本来はその時点で一経営者としての意識を持つべきですが、その意識が欠けている人もやはりいます。
そのため、自分の働く時間やスキルをうまくマネジメントできず痛い目に合ってしまう場合があります。仕事をする中で直面するそういったトラブルを解決しながら、セルフマネジメントができる人材に成長してほしいと思っています。

多くの書籍を取りそろえた木の本棚
▲本棚には勉強のための本が並ぶ

成長を助けるサポート体制として、重要な点は?

都丸氏:1つは仕事に対するレビュー(振り返り)をスタッフが必ず行う点です。テレワーカー1人でレビューを行うよりも第三者の目がある方が気づきも多く、成長も早くなります。

コトハバやママ同士で情報を共有するためのキャリアシート
▲コトハバやママ同士で情報を共有するためのキャリアシート

都丸氏:また、緊急時のバックアップ体制が整っていることも重要です。テレワーカーの皆さんには登録時に、子どもの入園状況・家族のサポートや介護の有無・仕事経験などを、キャリアシートに記入してもらっています。そのおかげで私たちは皆さんのパーソナリティやスキルを詳しく把握できるので、例えば急な出産などのいざというときもすぐにカバーできますし、仕事やプライベートの相談を受けたときもアドバイスしやすくなります。

このキャリアシートはママさん同士で共有してもらう場合もあります。お互いの置かれている状況を理解しあえていると、困ったときもスムーズに助け合うことができますね

4. テレワーク活用のポイントは「業務外コミュニケーション」

インタビューに応じていただいた株式会社CRANE代表取締役・安司寛太さん
▲株式会社CRANE代表取締役・安司寛太さん

CRANEの事業について、まずはお聞かせください。

安司氏:主な事業はロボットアプリ開発やWebサイト構築・運用です。社員は現在7名で、タカサキチの1室をオフィスとして借りています。
誰でもテレワークOKな会社ですが、基本的には常駐に近い形で出勤していますね。もちろん、荒天時や急用があるときなどは、オフィス以外で働いてもらっても全く問題ありません。
コトハバのママさんテレワーカーにも仕事をお願いすることがよくあります。継続的に依頼する仕事やプロジェクト単位での案件など、いろいろです。
クライアントはほとんどが東京にいるので、東京の仕事を群馬でこなしているというのが、今の僕たちの働き方です。

テレワークを活用できている理由はどんなところにあるとお考えですか?

安司氏:テレワークでは「仕事の頼み方」がポイントですが、Web関連の仕事は属人性が低くタスクの切り出しもしやすいので、仕事を受ける側としても依頼する側としても、テレワークと親和性が高いですね。
データもクラウドツールで共有できますから、技術的な問題は何もないです。

タカサキチで働くCRANEのみなさんの仕事風景
▲タカサキチで働くCRANEのみなさん

その一方で、テレワークの難しさはどんなところですか?

安司氏:モニター越しやチャットでのやり取りだけだと、例えば体調が良くないとか、相手の雰囲気やモチベーションといった部分はわかりづらいんです。
業務に関係のない雑談やちょっとしたコミュニケーションも対面に比べると減るので、組織作りやチームビルディングといった互いの関係性を形成する段階では、テレワークはあまり向いていないと感じます。頼り過ぎるのも危ないですね。

ですから、互いの温度感やモチベーションを共有するための対面コミュニケーションは意識して取るようにしていて、テレワーカーとも定期的に顔を合わせるように心がけています。業務以外のことも話して、お互いを知り合うことが大切だと思います。
だからこそ、タカサキチのような「集まれる場所」があることはテレワーク活用にとって重要な要素ですね。

5. 高崎市を、子育ても復職もできる街にしたい

安司さんと都丸さん

最後に、お二人がこれから目指すことをお聞かせください。

安司氏:僕は出身は茨城県で、大学から群馬に来たんです。群馬で大学を卒業すると多くの人は東京に行ってしまうんですが、高崎で働くことに決めていました。一番の理由は、都丸さんを始め、大学時代に出会った高崎の人たちがとても魅力ある方々で、彼らに続いて何かしたいと思ったからです。

だからこそ、彼らに続く20代が少ないことは課題だと感じています。群馬にいても東京の仕事ができることは僕たちが示せていると思うので、僕たちの活動をきっかけに同世代のプレーヤーがこの街に増えたら嬉しいですね。

木目調の室内に映える白を基調としたキッチンも備わっている。
▲タカサキチのキッチン。食事会や料理教室を通したママ同士の交流会も行われている

最後に、お二人がこれから目指すことをお聞かせください。

都丸氏:高崎はコンパクトシティで公共施設や病院、ショッピングセンターが近く、子どもが産みやすく育てやすい街なんです。現に、平成26年の東京都世田谷区の合計特殊出生率は1.06ですが、同年の高崎市は1.55となっています。
 
ただ、移住促進という点ではまだ魅力を伝えきれていないと思っています。そこで、子育てだけでなく復職もしやすい場所になれば、移住検討者にとっても魅力的な街になると思います。
移住の形はいろいろあって、例えば東京で保育園を見つけられなかった家庭が腰掛け移住で高崎に来て、父親は都内の企業に通い母親はテレワークをしながら復職の機会を待つという形もあります。子どもが成長して教育は東京が良いとなれば、東京に戻ってもいいですよね。
移住者の多様なニーズに応えられる街づくりのためにも、将来的にはタカサキチのような施設を高崎市と共同して駅前などに作るなど、子育て世帯に向けたさらなるサポートを展開していきたいと思います。

お問合せ先

一般社団法人コトハバ

https://www.cotohaba.com/

株式会社CRANE

http://crane-inc.io/

(参考)平成26年度補正予算地域実証事業の取組内容はこちら
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