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和歌山県白浜町

【取材日:平成30年9月14日】

企業誘致

ワーケーション

地域交流

計14社の企業誘致に成功した白浜町! テレワークとワーケーション促進で、目指すは白浜の“シラコンバレー”化

▲左から、白浜町役場・大平さんと坂本さん、和歌山県庁・坂野さん、NECソリューションイノベータ・森山さんと阪口さん
▲左から、白浜町役場・大平さんと坂本さん、和歌山県庁・坂野さん、NECソリューションイノベータ・森山さんと阪口さん

紀伊半島の南西部に位置する和歌山県白浜町。海水浴や温泉を楽しめるリゾート観光地として人気が高く、1年間に300万人以上の観光客が訪れます。

平成28年11月、NECソリューションイノベータ株式会社は「平成28年度予算 ふるさとテレワーク推進事業」を活用して、白浜町に南紀白浜サテライトオフィス(白浜センター)を構えました。 入居先は、白浜町役場が運営する『白浜町ITビジネスオフィス』。主にIT企業に貸し出されているオフィススペースで、現在は同社を含めて9社の企業が入居し満室状態。今年(平成30年)6月にオープンした『白浜町第2 ITビジネスオフィス』も、全4室がわずか数ヶ月で満室になったそう。

今回は白浜センターを訪問し、同社の森山由縁氏と阪口信吾氏、白浜町の坂本和大氏と大平幸宏氏、和歌山県の坂野悠司氏からお話を聞きました。

目次

1.IT企業のテレワークに最適な「セキュアなネットワーク」×「リゾート環境」(NECソリューションイノベータ)

2.企業誘致で町内に多くの移住と地元雇用が生まれた! 移住者に寄り添ったサポートで地域定着を促す(白浜町)

3.ワーケーションをフックに県をPR! 企業進出を手厚くサポート(和歌山県)

4.「産×官×地元」の連携で白浜町を『シラコンバレー』にしたい!

5.本事例についてのお問合せ先

1. IT企業のテレワークに最適な「セキュアなネットワーク」×「リゾート環境」(NECソリューションイノベータ)

▲NECソリューションイノベータ白浜センター長 阪口さん
▲NECソリューションイノベータ白浜センター長 阪口さん

まずは、NECソリューションイノベータが「ふるさとテレワーク推進事業」を活用して白浜センターを整備した経緯をお聞かせください。

阪口(NECソリューションイノベータ):以前から仕事上のご縁があったセールスフォース・ドットコムさんが「ふるさとテレワーク実証事業」をきっかけに平成27年から『白浜町ITビジネスオフィス』に入居していらっしゃっていて、当社にも声をかけてくださったんです。地方創生につながる意義ある取組なので、当社もぜひと本事業に応募しました。

現在は、阪口さんのほか2名の方が白浜センターに常駐して働いているそうですね。

阪口:私は、以前は大阪に勤務していましたが、センター開設と同時に白浜に移住しました。ほかの2名の社員も東京や名古屋から白浜に移住してきましたが、現在も移住前と同様の業務を行っています。

▲スマートフォンアプリ「白浜リンク」
▲スマートフォンアプリ「白浜リンク」

ふるさとテレワーク事業の中では、どんな取組をされましたか?

阪口:一つは『白浜リンク』というアプリの開発です。子育てや防災など、白浜町の暮らし情報を提供するアプリで、当社で開発して白浜町で活用いただいています。App StoreとGoogle Playから無償でインストールできるようになっています。

また、勤怠管理システムの実証実験も行っています。白浜町内の9か所に設置されている*NerveNetの基地局と社員を紐づけることで、基地局エリアに社員が出入りしたときの時刻や位置を記録し、勤怠管理に活用する仕組みです。NerveNetというセキュリティの堅牢なネットワークが構築されていることは、当社のようなIT企業にとって大きな利点ですね。

*情報通信研究機構(NICT)が開発した、耐災害ワイヤレスメッシュネットワーク。同ネットワークを介した端末同士では、インターネット接続がない状態でも通話やメッセージ交換が可能。災害時のための通信インフラだが、平時にはフリーWifiとしても一般利用に提供されている。

▲別拠点とテレビ会議を行うNECソリューションイノベータの社員。窓からは白浜の海と空を望む
▲別拠点とテレビ会議を行うNECソリューションイノベータの社員。窓からは白浜の海と空を望む

白浜センターはNECグループの合宿や研修にも頻繁に使われているそうですが、利用者の感想はいかがですか?

阪口:以前、都内から白浜を訪れた社員にアンケートしたのですが、正直なところ、白浜町の認知度はあまり高くはなく、和歌山県を訪れたことがない社員も6?7割程いました。

しかし、いざ来てみると多くの社員が白浜ファンになります。沖縄のような南国の雰囲気があって、オフィスからは青い海と澄んだ空が一望できます。温泉も豊富で、夏になれば海水浴はもちろん、富田川では1000匹以上のホタルを見ることができます。場所は白浜町の坂本さんに教えていただきました。総じて白浜は、高い*ワーケーション効果を期待できる、テレワークに最適な場所だと思います。

*「ワーク」と「バケーション」を組み合わせた造語。オフィスを離れ、リゾート地など環境の良い場所に滞在しながら仕事をすること

阪口:もちろん、仕事にも全く問題はありません。合宿で訪れた社員たちは、白浜町はアイディア創出に適した場所だと言っていました。

▲NECソリューションイノベータイノベーション戦略本部 森山さん
▲NECソリューションイノベータイノベーション戦略本部 森山さん

白浜町でのテレワークについて、課題を挙げるとすればどんなことですか?

森山(NECソリューションイノベータ):公共交通網が弱いので、駅や空港からオフィスへのアクセスは車がないと不便ですね。私は出張で白浜町に来ることが多いので特にそう感じます。
もう1点は東京からの航空運賃です。羽田空港から白浜空港へはわずか80分のフライトだし、1日に3往復が運行しているので利便性は高いのですが、往復の航空券は6万円前後かかります。人数や移動回数が増えると、それなりのコストになってしまうところはありますね。

坂野(和歌山県庁):和歌山県では航空運賃について、新しくオフィスを設けた企業に対して一定条件のもと、東京〜白浜間の航空運賃を最大で半額、3年間にわたって助成する制度を設けています。

また、南紀白浜空港は平成31年4月から民営化され、株式会社南紀白浜エアポートが運営する予定になっています。民営化を通じて空港の利便性が増すことで、ビジネス客が増加し、交流人口が更に拡大するのではと期待しています

▲白浜センターから夕日を望む
▲白浜センターから夕日を望む

2. 企業誘致で町内に多くの移住と地元雇用が生まれた!移住者に寄り添ったサポートで地域定着を促す(白浜町)

▲白浜町役場 坂本さん
▲白浜町役場 坂本さん

ふるさとテレワーク事業でオフィスを整備したNECソリューションイノベータとセールスフォースを含めて、多くのIT企業が白浜町にサテライトオフィスを置かれていますね。

坂本(白浜町):現在は計13社の企業が町運営のオフィスに入居し、およそ30人の方が働いています。そのうち4社(三菱地所株式会社、株式会社ブイキューブ、株式会社subLime、株式会社ウフル)の入居先は、今年(平成30年)6月に開設した『白浜町第2 ITビジネスオフィス』です。募集開始からかなり早い段階で問合せから入居まで至っており、私たちも手応えを感じています。

また、平成28年にはクオリティソフト株式会社様が都内から白浜に本社を移転されたんです。グループ企業のSRI様が、平成14年から白浜町にオフィスを置いていたことが背景にあります。入居先は町運営オフィスではありませんが、これをきっかけにおよそ80人が白浜で雇用されました。

合計すれば、オフィス新設や移転を通じて100人以上の方々が白浜町で雇用されたということなんです。

▲白浜町ITビジネスオフィスから車で10分の白良浜(しららはま)
▲白浜町ITビジネスオフィスから車で10分の白良浜(しららはま)

白浜町が多くの企業を惹きつけている背景には、町からのどんなサポートがあるのでしょうか?

坂本:移住者に対して移住サポート(引っ越し、転居、住む場所の提案等)だけでなく、家族連れの場合はお子さんの転校手続をお手伝いしたりしています。ほかにも、企業同士や地元の若者と交流する飲み会を開くこともあれば、週末にプライベートで釣りやバーベキューにお誘いすることもあるくらいで(笑)

移住者にとても寄り添ったサポートをされているんですね。

坂本:日常に根ざした白浜での過ごし方を伝えたいという気持ちがあるんです。白浜は海や温泉、熊野古道も近いなど観光資源が豊かな土地ですが、移住者にとっては、観光地ではなく暮らしの場として白浜町を楽しむことが大切ですから。

とは言っても、釣りなんかを一緒にするのも、自分が楽しいから好きでやっている部分もあります(笑)。

移住者と地元の交流が少ないという課題をほかの地域でお聞きすることもありますが、白浜町のようなサポートは誘致企業にとっても心強いですね。

大平(白浜町):誘致企業様と地元との交流はやはり意識していて、例えば、誘致企業の方々に対しては、地元の秋祭り参加をお誘いしています。祭りに参加すると、初対面の人たちもすぐに仲良くなれるんです。NECソリューションイノベータ様の皆さんも今年は参加してくださる予定です。

▲白浜町役場 大平さん
▲白浜町役場 大平さん

誘致した企業の主導でも、地元に密着した様々な取組を行われているそうですね。

大平:セールスフォース様が白浜オフィスを会場にして、子ども向けのプログラミング教室を何度も開催なさっています。NECソリューションイノベータ様が支援されたこともあります。もちろん白浜町からもサポートしました。
また、中学校の先生に対して、「プログラミングの教え方」講座も開催しています。中学校から要望があったんです。この講座がきっかけとなって、白浜中学校は修学旅行のとき、セールスフォース様の都内オフィスを訪問したそうですよ。
多くの先進的なIT企業にオフィスを置いていただけたことは地元の子どもや学生にとって良い刺激になっていると感じます。

誘致企業の皆さんには、学生の職業体験も積極的に受け入れてもらっていて、桃山学院大学(大阪府)の学生さんが去年と今年(平成30年)、NECソリューションイノベータ様やセールスフォース様で職業体験をしました。4日間から1週間ほどの期間です。地元の中学校の職業体験を受け入れていただいたこともあります。

3. ワーケーションをフックに県をPR! 企業進出を手厚くサポート(和歌山県)

▲和歌山県 商工観光労働部 坂野さん
▲和歌山県 商工観光労働部 坂野さん

和歌山県も奨励金や融資制度を整え、企業の県内進出をバックアップされていますね。

坂野:全国のほかの自治体と同じように、和歌山県も若者流出という課題を抱えているため、魅力的な産業や企業を誘致して雇用を創出して若者流出を防ぎたい狙いがあるんです。
具体的には、更なるIT企業のサテライトオフィス誘致を図るため白浜町の第2ITビジネスオフィス整備を支援するとともに、全国最高水準の奨励金制度を設けています。また、誘致企業のIT人材確保の支援として、企業面談会の開催や首都圏での移住イベント出展などの取組も行っています。

テレワークの延長として、ワーケーションも積極的に推進されているそうですね。

坂野:和歌山県は、白浜町におけるふるさとテレワーク事業の成功を受け、テレワークを活用して地域に中長期的に滞在しながら都市部の仕事を継続し、同時に地域でしかできないことも行うワーケーションを推進しています。 ワーケーションは、仕事(work)と休暇(vacation)を組み合わせた欧米発の造語ですが、休暇は観光等のエンターテインメントに限定せず、地域でのボランティア活動や研修、オフサイトミーティング、地域主体との交流等のより広義な活動を含むと解していて、和歌山県は交通・通信インフラ、研修施設、観光地等のワーケーションに必要な要素を幅広く、高いレベルで有しています。ワーケーションを通じて当県の魅力をより深く知っていただきたいと思っていますし、ふるさとテレワークのお試しとしても活用いただきたいと考えております。

今後は、テレワーク普及に伴いワーケーション的な働き方はもっと盛んになると考えていますし、ワーケーションによって地域への人の流れを創出できるため、2020年の東京オリンピックにおける混雑緩和のためにも非常に有用と考えています。

具体的にはどんな取組をしていますか?

坂野:今年度はテレワークデイズに合わせて7月23日から24日までの間に、首都圏の親子を対象とした親子ワーケーションプログラムを白浜町及び隣の田辺市で実施したところ、14組の家族(大人17名、子ども19名)に参加いただき、盛況に終えることができました。プログラム参加者からは非常に好評をいただき、「テレワークを活用したおかげで仕事を犠牲にせずに子どもたちとの休日を楽しめた」といったご意見や、「様々な会社からの参加があったため人脈構築にも効果があった」等のご意見をいただきました。

特に後者のご意見については、東京に帰ってからも家族ぐるみの交流が続いているご家族もあると聞いており、テレワーク・ワーケーションを通じて、新しいライフスタイルを体験いただき、仕事だけでなく人生そのものもさらに豊かになるような体験を提供できたと考えております。アンケートでも、来年度も同様の取組に参加したいとの声が全ての参加者から寄せられました。

4. 「産×官×地元」の連携で白浜町を『シラコンバレー』にしたい!

▲夏には多くの海水浴客が白良浜に集まる
▲夏には多くの海水浴客が白良浜に集まる

最後に、白浜町でのテレワークについて今後の展望をお聞かせください。

森山:今まで、白浜センターでは都市部の仕事をメインに手がけてきましたが、今後は地方創生を軸とする事業にもっと注力したいと考えています。今年(平成30年)7月には当社と白浜町で包括連携協定を締結して、町の発展に向けた協力を確認しました。

ふるさとテレワーク事業で整備した白浜センターを地域交流の場としても活用して、地域の新たな需要を掘り起こせればと期待しています。白浜町にいるからこそ可能な地方創生事業に取り組みたいですね。サテライトオフィスにおける地方創生モデルを白浜から全国へと展開するのが、最終的な目標です。

▲白浜町第2ITビジネスオフィス
▲白浜町第2ITビジネスオフィス

大平:現在、町の運営する2つのITビジネスオフィスはどちらも満室で、引き合いを頂くにもかかわらず企業の入居場所がない状態です。和歌山県とも協議しながら、新オフィス設置を検討しています。

IT産業集積地としての白浜の知名度も上がっていて、昨年度は200件以上の視察がありました。企業だけでなく自治体や官公庁の視察も多いですね。テレワークデイズ2018では経済産業省がテレワーク実証実験で来られたし、9月18日からは期間限定で内閣府のサテライトオフィスも設置される予定です(取材者注:予定通り実施された)。
いずれは、白浜町をIT企業の集積する“シラコンバレー”として有名にしたいと坂本とも話しているので(笑)、これからもっと多くの企業や団体に、白浜で働くことの価値を知っていただけるよう努力していきたいと思います。

坂野:白浜町へのIT企業のサテライトオフィス誘致を一層推進し、白浜町をICTタウンとしてIT企業の集積地にしたいと考えています。

みなさん、ありがとうございました!

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(参考)平成28年度予算補助事業の取組内容はこちら
(参考)平成26年度補正予算地域実証事業の取組内容はこちら
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