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京都府南丹市

【取材日:平成30年9月11日】

地元雇用・地元ワーカー

特色あるサテライトオフィス

地域交流

京都市内から4社がサテライトオフィスに入居
地元の協力も背景に700人を映画祭に集客!

星が見える夜空の元開催されたイベントの様子

京都市や亀岡市と境を接し、京都府を南北に分けるように横たわる京都府南丹市。
この南丹市で平成29年5月、「南丹市起業支援サテライトオフィスSoi 」がオープンしました。旧西本梅(にしほんめ)小学校を、ふるさとテレワーク制度を活用して改修した施設です。ここでは企業オフィス4室が貸し出されているほか(取材時点では3室が入居中)、地域交流イベントも活発に開かれています。今年(平成30年)9月に開かれた映画祭にはおよそ700人が集まりました。

今回は、Soiを運営する株式会社ブイ・クルーズCEOの阿久津泰紀氏、南丹市企画政策部の髙屋(たかや)和真氏、そしてSoiに入居している株式会社La Himawari の代表取締役・髙坂(たかさか)尚平氏から、お話をうかがいました。

目次

1.「産・官・学・地域」が協力して生まれた、サテライトオフィスSoi

2.仕事の能率が上がる自然豊かな環境のオフィス

3.一夜の映画祭で世代や地域をこえたふれあいが実現!

4.ボランティアのマッチングサイトから学生を地域に呼びこむ

5.地元の人の手による「起業&人材育成」の場に育てたい

6.本事例についてのお問合せ先

1. 「産・官・学・地域」が協力して生まれたサテライトオフィスSoi

ブイ・クルーズの阿久津さん(左)、南丹市の髙屋(たかや)さん(右)
▲ブイ・クルーズの阿久津さん(左)、南丹市の髙屋(たかや)さん(右)

まずは、「南丹市起業支援サテライトオフィスSoi」がオープンするまでのいきさつをお聞かせください。

髙屋(たかや)氏:「平成28年度ふるさとテレワーク推進事業」に、「地域ビジネス研究会 」という組織が母体となってコンソーシアムを作り、応募しました。この研究会は「産・官・学・地域」が連携して、地域社会と企業の新たな共存共生のモデルを研究する集まりです。南丹市と同志社大学が発起人となり、NECさんやブイ・クルーズさんなど企業様にもお声がけし、平成28年2月に立ち上げました。

阿久津氏:私たち民間企業も、地域と率直に話し合い地域のニーズを詳しく知りたいと考えていたので、ぜひと研究会に参加しました。
研究会の長期的ビジョンとして、南丹市を実証モデルとしてICTソリューションを開発して日本各地に広める狙いもあり、各団体が持つテクノロジーや知見の活用方法を議論しています。

Soiのアイディアも研究会から?

阿久津氏:そうですね。南丹市での地方創生を促進するためにサテライトオフィスや地域交流の場を作ろうと話しあって、Soi設立に向けてふるさとテレワーク事業に応募しました。

「南丹市起業支援サテライトオフィスSoi」として使用されている旧園部町立西本梅小学校

Soiを作るにあたって気をつけたのはどんなことでしょう?

阿久津氏:Soiの取組を地元の方々にご理解いただけるように最善を尽くしました。半年ほどかけて説明会を繰り返し開き、「Soiで何を行い、どう地域に役立てたいのか」を地元の皆さんにお伝えしたんです。

阿久津さん(左)1階で管理人を行う木村さん(右)
▲阿久津さん(左)1階で管理人を行う木村さん(右)

最初の頃は、私たちの思いを伝えるのが難しく感じることもありました。ご年配の方も多く取組が理解されづらかったですし、西本梅小学校は多くの方の母校で思い入れも強いものがありましたから。
それでも、時間をかけて説明するうちに考えをご理解いただいて、最終的に小学校の使用を認めていただきました。

2. 仕事の能率が上がる自然豊かな環境のオフィス

デスクに向かい、黙々と作業する様子
▲Soiにあるブイ・クルーズのオフィス

地元の方々のご理解も得られてSoiがオープンし、オフィスの利用状況はいかがですか?

阿久津氏:今は当社を含めて計3社が入居しています。利用者の多くはSoiに常駐ではなく、京都市内等から不定期の利用が多いようです。

当社も同様です。私を含めた4人が京都市内の本社オフィスから代わる代わる来ています。
Soiに来るかはもちろん社員の自由意思ですが、私自身は特定の曜日を決め、できるだけ来るようにしています。地域に根ざした運営を目指しているので、地元の方とのつながりは非常に大切です。

La Himawari 髙坂(たかさか)さん
▲La Himawari 髙坂(たかさか)さん

現在Soiに入居しているLa Himawariさんでは、Soiで働くことをどのように捉えていますか?

髙坂(たかさか)氏:私たちは週に数回ほどSoiで仕事をしています。当社は京都を拠点として企業やセミナーのコンサルティングを行っており、その準備や打合せをSoiですることが多いですね。

一面に広がるのどかな田園風景

Soiのオフィスには、メリットが本当にたくさんあります!
一番は、田畑や森林といった自然の中で集中して仕事に打ち込めることです。アイディアを思いつきやすいし、ディスカッションも活発になりますよ。

木々が生い茂る山々

自然の中の落ち着いた雰囲気が、仕事に良い影響を与えてくれるんですね。

髙坂(たかさか)氏:実は、今日も少し仕事で悩むことがあって気持ちが落ちつかなかったんですが、山の木々を見ながら仕事をこなすうちにリラックスできました。
都市部特有の不快な刺激がなく、焦りやイライラがなくなるのは大きなメリットですね。

阿久津氏:昼間はオフィスをデイユースで利用して、夜は貸出しのテントを使って校庭でキャンプする、という使い方もできるので自然の中で働くことに興味がある方にはぜひ体験してほしいですね。

3. 一夜の映画祭で世代や地域をこえたふれあいが実現!

夕暮れの校庭で映画が上映されている「地球とヒトが笑う映画祭」の様子
▲校庭での映画上映。校庭は普段はキャンプ場として貸し出されている

オフィスの貸出しのほか、イベントも積極的に開催していますね。どんな狙いがあるのでしょうか?

阿久津氏:主な狙いは、Soiや私たちの取組を地域内外に知っていただくことです。これまで子ども向けロボットプログラミング教室やキャンプイベント、映画祭など様々なイベントを開いてきました。

9月1日(土)に開催した映画祭(「地球とヒトが笑う映画祭」)には、約700人もの人が集まったそうですね。

髙坂(たかさか)氏:そうなんです! 私が実行委員長として、委員会主催で屋内外にスクリーンをいくつか用意して、何作品もの映画をオールナイトで上映しました。
以前、愛知県の佐久島で映画祭運営に携わったことがあり、これを京都でも実現したいと思ったのが開催のきっかけです。

映画祭のPRや準備では、企業や自治体の皆さんはどのように連携されましたか?

髙坂(たかさか)氏:主なPRは、当社がInstagramやFacebookなどのSNS上で行いました。SNS経由では20代の都市部の若者が数多く参加してくれました。参加者の居住地域は関西圏が多かったですが、北海道や九州から来てくれた方もいましたよ。
地元の方々に対しては紙のチラシを配布して告知を行ったのですが、南丹市さんにもご協力いただきました。

たくさんの人と協力し、プール掃除に励む様子
▲プール掃除の様子

プールに浮かぶ色とりどりの風船がライトで明るくなっており、幻想的な雰囲気を醸し出す
▲プールに水を張り、色とりどりの風船を浮かべた

髙屋(たかや)氏:PRに限らず特に8月後半は準備が佳境を迎えたので、私も何度もSoiに足を運びました。
というのも、小学校を管理する最終責任者は南丹市なので、準備の打合せに参加したり、プール利用のための水道・排水チェックに立ち会ったりする必要があったんです。

協力して準備を進めたのですね。地元からのリアクションはいかがでしたか?

髙屋(たかや)氏:やはり開催前はいろいろなご指摘を頂きました。何百人も参加者が来て周辺交通は大丈夫か、夜間の騒音は問題ないかなど、当然のご心配です。
阿久津さんや南丹市さんにもご協力いただいて、時間をかけて一つひとつの点について対応策を説明し、皆さんの心配を解消できるよう努めました。

準備の日々で思い出深いのは、小学校周りの草刈りを地元の皆さんとしたことです。地元の定期的な草刈りですが、映画祭に合わせて他のエリアより時期を早めて行うことになりました。偶然お盆にあたったので、道具を借りて映画祭関係者だけで集まろうと話していたんですが……当日は、「素人には難しいだろ」って(笑)、地元の人が手伝ってくださったんです。あの日は嬉しかったですね。私たち実行委員会やLa Himawariが地域に受け入れていただくうえで、大切なポイントだったと思います。

体育館で映画が上映される「地球とヒトが笑う映画祭」の様子

阿久津氏:そういった髙坂(たかさか)さんや南丹市さんのご尽力もあり、映画祭当日は、この周辺からも100人以上に来ていただいたんです。お子さんやお孫さんを連れて来られた方もいましたよ。

出店中の屋台の様子

髙坂(たかさか)氏:屋台でピザを提供していた地元のおじさんが、遠方から遊びに来た若い子にピザをごちそうする光景も見かけました(笑)
そんな風に地元の人と都市の若い人がふれあう光景を見て、地域振興会の方々も感動したと言ってくれました。それはやっぱり、嬉しかったですね。映画祭を開いて良かったと思えました。

日が傾くもにぎにぎしい雰囲気のある映画祭

4. ボランティアのマッチングサイトから学生を地域に呼びこむ

学生とボランティア求人のマッチングサイト“Persogla”のトップページ
▲Persoglaトップページ

映画祭という大きなイベントも一段落して、これからの取組として地域ビジネス研究会やSoiを中心に行っていることはありますか?

阿久津氏:研究会では、学生とボランティア求人のマッチングサイト“Persogla ”の運営を実証しています。ブイ・クルーズが制作して7月に開設したサイトです。いろいろな団体のボランティアが紹介され、学生は会員登録すれば簡単に応募できます。
実は映画祭の準備にもPersoglaからボランティアを募集したところ、京都市内の学生が6人来てくれました。
現在は京都府を中心に全国から「ボランティアを集める仕組みを利用したいので話が聞きたい!」という自治体様からの対応に追われています。

このサービスの狙いはなんでしょうか?

阿久津氏:地域における人材不足やアイディア不足の解消です。
たとえば、若年層への訴求には若い人のアイディアが効果的ですが、自治体の方々からは、人材を新しい企画に登用するゆとりが少ない現状もあり、ノウハウ不足に陥りがちだと聞いています。
そこで、Persoglaを通じ学生を地域に送り込み、自治体単独では思いつかなかったアイディアを創造させ、その具現化にも学生自らが関わり、地域と交流してもらう。そのプロセスで「相互に成長できた」という関係が築かれることを、初期のサービスの効果として期待しています。。

5. 地元の人の手による「起業&人材育成」の場に育てたい

たくさんの手形が押されている「南丹市起業支援サテライトオフィスSoi」のウェルカムボード

最後に、Soiをどんな場所にしていくか今後の展望をお聞かせください。

阿久津氏:現在、Soiには京都市内から企業が入居していて、地域交流イベントも活発に行っています。今後はこのアドバンテージを活かし、都市部に拠点を置く企業のテレワーク施設としての活用促進はもちろん、地元の起業拠点としてもSoiが活用されるようにしたい。地元の人が働いたり起業したりする場にし、都市部企業のスタッフと、地元で起業を目指す地域住民の交流の場として運営し続けることが、最終的な目標です。

都市部と地方では情報量やカルチャーに違いはあり、地元の皆さんにはビジネスへのハードルが高く思われてしまうかもしれません。それでも、地元からできることはたくさんあります。平易な言葉で誠実にお伝えすれば、地元の皆さんにもご理解いただけると考えています。

地域ならではの起業環境を整え、Soiを「地域交流がともなうテレワーク拠点」にするには、Soi利用者と地元の人が交流するアプリケーションの開発が必要になると考えています。ふるさとテレワーク事業に応募したときは準備できなかったのですが、いずれ実現させたいですね。

働く場所や会社が地元にあれば、若い人も地元に残ることができますよね。

阿久津氏:実は、Persogla経由で知り合った学生が来春から当社で働くことになったのですが、彼の実家はSoiのすぐ近くにあるんです。
大学を卒業した後は実家に戻るそうなので、Soiに常駐してワークショップや地域資源活用プロジェクトに関わってもらうことを検討しています。
いずれは地元の方々が主体になってSoiを運営していただきたいと考えているので、地元出身者の雇用はずっと実現したいことでした。

髙屋(たかや)氏:市でも、一昨年度から地域の人材育成事業に取り組んでいます。起業や特産品開発に関心のある方がマーケティングなどを学ぶ取組です。
市の事業としては今年が最終年度ですが、今までにお呼びした講師と市民の皆さんの間にはつながりがあると聞いているので、Soiも一つの拠点として市民の間で同じような取組が続いてくれればと思っています。

ほかにも、起業支援制度やサテライトオフィス補助制度を整備しているので、多様な試みができる場所としてSoiを活用していただきたいです。地域経済の活発化につながるチャレンジを期待しています。

「南丹市起業支援サテライトオフィスSoi」にかかわる皆さん
▲前列左から髙坂(たかさか)さん、阿久津さん、髙屋(たかや)さん。後列はブイ・クルーズのみなさん

お問合せ先

(参考)平成28年度予算補助事業の取組内容はこちら
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