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テレワークの取組、ワーク・ライフ・バランスの実現ともに極めて優れている。特に、
生産オペレーターもトライアルを実施するなど、テレワークを活用した多様な働き方
でワーク・ライフ・バランスを実現している。
会社概要
組織名
名称:味の素株式会社
創立:1925年
組織代表者
役職代表取締役取締役社長最高経営責任者
氏名西井孝明(にしいたかあき)
業種製造業
所在地東京都
総従業員数3,464人(2018年3月時点)
テレワークの導入形態
終日在宅勤務 部分在宅勤務
モバイルワーク サテライトオフィス
テレワークの利用者数(過去1年間)2,922人(2018年3月時点)
■制度の整備状況
「どこでもオフィス」という名称で、自宅やサテライトオフィスの他、セキュリティが確保
され、集中して勤務できる場所であればどこでも勤務できるテレワーク制度を導入している。
現在では生産オペレーターを含む全社員の84%がテレワークを活用している。2014年10月か
ら最大月4回を上限とした在宅勤務制度を導入していたが、2017年4月に現行の制度に改めた。
〈テレワーク制度のポイント〉
○試用期間中や新卒採用者で勤続1年未満の社員などを除く全社員が対象。
○最大週4日まで、終日のみならず30分単位で活用できる。
○コアタイムなしのフレックスタイム制や時間単位年休との併用が可能。
基本的な事項
味の素株式会社
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(図表1「どこでもオフィス」の概要)
■経営上の位置付け
テレワークの実施は、多様な人財の活躍を実現する上で不可欠な働き方であるという観点か
ら、テレワークを含めた働き方改革推進の取組を中期経営計画に入れるとともに、経営会議を
サテライトオフィスで実施するなど、経営トップが率先して推進している。
また、「どこでもオフィス」の導入にあたり、経営企画、情報、人事、総務部門からなる経
営直轄の会社横断の働き方改革事務局を設置した。現在ではさらに、事業や営業を統括する組
織、調達や財務部門も加えた働き方改革拡大事務局を設け、全社横断的に取り組んでいる。
■周知・啓発方法
テレワークを含めた働き方改革に関する社内情報サイト「るるく」を作成し、月2回以上、
各部署のテレワークの好事例等を共有している。
さらに、社長自ら、社内報にてテレワークの意義やメリットについて情報を発信している。
■人事・労務管理の整備
労務管理は勤怠管理システムを活用している。テレワーク等、社外からのネットワーク接続
時刻(仮想私設通信網(VPN)の接続履歴)を勤怠管理システムに客観時刻として表示させ
ている。テレワーク利用者は、その時刻をもとに勤怠管理システムへの入力を自身で行ってい
る。自身の入力時刻と客観時刻に30分以上の差異がある場合は、テレワーク利用者本人がそ
の差異理由を申請し、上司はその内容を確認するというステップを必ず踏むようにしている。
~「どこでもオフィス」の導入~
顔を合わせないと仕事ができないという既成概念を打破する
ルール策定(緩和)
・週1の出社以外は利用制限なし
・申請は前日まで、終了報告不要
・業務内容・場所は問わない
・育児・介護との併用可
風土醸成
・管理職は週1回(ルール)
「どこでもオフィス」
・テレワークデー本社実施
・サテライトオフィス利用料は
全社負担(部門負担なし)
基盤整備
・軽量PCの全社導入
・社宅サテライトオフィス化
・社外サテライトオフィス契約
・モバイル勤務履歴(VPN)の開示
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■情報通信環境の整備
【在宅勤務、モバイル勤務】
全社員にカメラ付き軽量パソコンとスマートフォンを貸与し、スマートフォンのテザリン
グ機能を用いてテレワークができる環境を整備することで、自宅にLAN環境がなくともテ
レワーク出来る仕組みを構築している。
【サテライトオフィス勤務、モバイル勤務】
サテライトオフィス会社と契約し、全国約140拠点のオフィスを利用可能としている。ま
た、自社の事業所内にサテライトオフィススペース(全国11拠点)、社宅にサテライトオフィ
ス(東京・大阪の2拠点)をそれぞれ設置し、サテライト環境を確保している。
(写真1サテライトオフィス勤務風景)
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ワーク・ライフ・バランスに関する事項
■健康で豊かな生活のための時間の確保
【労働時間の工夫】
テレワークの拡大に合わせ、2017年4月より所定労働時間を20分短縮(年間80時間相当)
したほか、生産オペレーターを除く全社員にコアタイムなしのフレックスタイム制度を適用
している。
この取組の結果、テレワーク利用者を含む全社員の総実労働時間が対2016年度比で75時
間減少して1,842時間になったほか、短時間勤務者が14%減少して、よりフルタイムで働く
ことができる環境整備ができた。
テレワーク等、社外からのネットワーク接続時刻(仮想私設通信網(VPN)の接続履歴)
を勤怠管理システムに表示して労働時間を見える化することにより過重労働を防止してい
る。
さらに、本社閉館時刻の前倒し(水曜17時、水曜以外19時)を実施し、所定労働時間内
での業務終了を奨励している。本社が早く業務を終了することにより、テレワーク中でも
19時以降の指示依頼等が少なくなった。その結果、2016年度比で平均終業時刻が18時前の
社員がテレワーク利用者を含めて、25%増加し、75%となった。
また、毎週金曜日の午後をノー会議とし、半休取得、テレワークの活用を推奨している。
これらの結果、対2016年度比でテレワーク実施者が37%(約800名)、総実施回数が約
37,000回増加した。
■就労による経済的自立、多様な働き方・生き方の選択
【多様な人材の活躍】
定年退職後のシニア社員や障がいを持つ社員もテレワークの対象として利用を推奨してい
る。この結果、2016年度比で定年退職後のシニア社員利用者は2.4倍(20人から48人)となり、
総実施回数は1.2倍となった。また、障がいを持つ社員の利用者は1.7倍(24人から41人)
となり、総実施回数は2.4倍となった。
【育児・介護と仕事の両立】
テレワークの申請は原則前日まで、上司了解の場合は当日申請も可能としているため、育
児や介護を担う社員にとって、利用しやすい柔軟な制度となっている。制度概要や情報管理・
セキュリティ対策等を規定した「「どこでもオフィス」運用ガイドライン」において「テレワー
ク中の育児・介護と勤務の併用を可能」と明記することで、テレワークの前後、または合間
に、育児・介護に従事しながら勤務することを推奨している。
2016年度比で16歳未満の子どもを持つ社員の総実施回数は1.4倍となった。
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【その他】
通常はテレワークが難しい生産オペレーターも、テレワークが実施できるように積極的に
トライアルを行っている。トライアルの結果、川崎事業所では生産オペレーターのテレワー
クの実施に成功した。
川崎事業所の例(図表2、3を参照)では、工場に勤務する日勤の班長と日勤社員のAさ
んが在宅勤務で棚卸データの入力や生産計画の資料作成などの事務作業を行った。この結果、
事務作業を効率的にできたことで空き時間が生まれ、その時間を活用して生産オペレーター
の仕事を日勤班長と日勤社員のBさんが担当した。これによって、生産オペレーターの交
替勤務者も一部の事務作業を在宅勤務で実施することができた。
工場の平均年齢は40歳代前半であり、今後、介護等の必要が生じた場合でも柔軟な勤務
ができる体制があることが強い組織につながると考え、成功事例を工場の報告会でも共有し、
好事例の横展開(水平展開)を推進している。
(図表2 工場における事務作業の在宅勤務促進事例)
7時8時13時15時17時
日勤
班長
日勤
Aさん
日勤
Bさん
交替
班
①在宅勤務(棚卸データ入力)
①在宅勤務(生産計画資料作成)
3直監視運転・監視
原料調合作業SAP入力
事例紹介(川崎事業所の取組み)
目的:マルチスキル・人事制度を活用し働き方の幅を更に広げる!
取組み①事務作業の在宅勤務推進
②交替班の一部在宅勤務の実現
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(図表3 工場における生産オペレーターの在宅勤務実施事例)
交通機関の乱れが予想される天災時におけるテレワークも推奨している。
2018年1月22日、1月23日の関東エリア降雪時には、本社社員の60%がテレワークを
実施した。
(図表4 本社の仮想私設通信網(VPN)への社外からのアクセス数)
また、勤務場所を問わないテレワーク制度としているため、交通費の安い時期に早めに帰
省し、帰省先でテレワークを実施したあとに、長期休暇を取得することが可能となっている。
7時8時13時15時17時
日勤
班長
日勤
Aさん
日勤
Bさん
交替
班
棚卸SAP入力
資料作成
運転・監視
⇒②在宅勤務(事務作業)
3直
監視
原料調合作業
&監視
SAP入力
⇒運転
取組み①事務作業の在宅勤務推進
②交替班の一部在宅勤務の実現
生産部門で難しいと
言われる事も多いが
工夫次第で「働き方改革」
の取り組みは可能!
社外からのアクセス数
2017年4月2018年3月
7月24日
テレワークデイ
10月23日
台風23号
1月23日
関東積雪
2月2日
関東積雪
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■社員の満足度
「どこでもオフィス」やコアタイムなしのフレックスタイム制の導入などをはじめとする柔
軟な働き方の導入や、成果にコミットした自律的な働き方を促す意識改革などの取組の結果、
2017年度に組織での働きがいや仕事への熱意に関する意識調査「エンゲージメントサーベイ」
を実施したところ、79%の社員が「働きがいを実感している」と回答した。
他社の模範となる取組に関する事項
■労務管理上の工夫
「「どこでもオフィス」運用ガイドライン」に、「どこでもオフィスの活用自体による人事評
価ヘの影響はない」ことを明記し、テレワーク実施者についても公正に評価している。また、
人事評価の要素の1つに2017年度から「生産性向上」を入れている。
所定外労働時間と休日労働時間の合計が60時間を超える場合は保健師からアンケートを送
付し、80時間を超える場合は産業医または保健師による面談を行っている。
■環境整備上の工夫
全社員にスケジューラーの入力を徹底することで、モバイル環境下でも会議調整できるよう
にしている。
テレビ会議を効率的に実施するための大画面ディスプレイを全社で80台、役員室・会議室
に導入しているほか、スピーカーとマイクを配置し、いつでも簡単にテレワーク利用者と会議
ができる環境を整備している。
(写真2 テレビ会議の実施風景)
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■生産性向上の工夫
テレビ会議を奨励するほか、全社でペーパーレス化を推進しており、ペーパーレス会議の推
奨、領収書の電子申請、パソコンからのFAX受発信等を実施している。
この結果、テレビ会議の実施回数は2016年度比で約2倍となるとともに、ペーパーレス化
については、経営会議・取締役会で約13万枚、本社コピー枚数は約100万枚削減(20%削減)
を実現した。
さらに、本社では2019年4月に向けて順次フリーアドレスを実施しており、1フロアでフリー
アドレスを実施した結果、9割の書類キャビネットを削減できた。
■その他
テレワーク・働き方改革の取組を日本全体に広げるべく積極的に講演・取材へ協力している。
2017年度以降の講演数は45件、取材数は(他社、マスコミ、政府機関等)60件となった。
また、テレワーク・デイズにも積極的に参加しており、2018年度は味の素国内グループ会社(4
社)を含む、東京及び近郊地区勤務者の計3,000名を対象に7月23日〜27日の複数日でテレワー
クを実施した。この結果、通常の1.3倍となる1日平均1,089名がテレワークを実施した。
(図表5 テレワーク・デイズ期間におけるテレワーク実施者数)
(写真3 テレワーク・デイズ時のオフィス風景)
テレワーク実施者数
味の素株式会社
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